権利法NEWS

野田正彰著・講談社

 著者は精神科医ですが、それにとどまらず、幅広い分野で活動され、日航機墜落事故をはじめ数多くの犠牲者を出した事故の被害者遺族から丹念な聴き取りを行い、突然に大切な人をうばわれ家族の精神状態がどのような経過をたどるのか、またそこから何を学ぶべきかについて示唆に富んだ分析を加えた『喪の途上にて』、第二次世界大戦で日本軍から強制連行され、奴隷労働や性奴隷としての非人間的な取扱いを受けた生存者からの聴き取りをもとに著した「虜囚の記憶」、精神障害者の犯罪が報じられるたびに保安処分の必要性が強調される状況を踏まえ、一三件の重大事件について調べ、患者や家族からが発していた支援を求める叫び(クライシス・コール)を精神科医療や医療制度が受け止められず、事件を防ぎ得なかったのは何故か、医療はどうあるべきかについて論じた「犯罪と医療ークライシス・コールに応えたか」など、数多くの著書があります。エッセイストとしても優れた能力を発揮し、アジアの文学、芸術にも造詣が深く、真の知識人であり、決して同調圧力に屈することなく、たんたんとした、けれど真摯で判りやすい文章で、日頃気づきにくい問題を指摘してくれるその著書は、常に大切なことに気づかせてくれます。

 本書は、題名のとおり、うつ病に関して論じたものです。

事務局長 小林 洋二

 12月11日に開催された厚労省社会保障審議会医療部会で、厚労省が、第六次医療法改正にあたり、「国民(患者)の役割・責務」の規定を追加するという案を提示、これをめぐって患者支援者の委員二人の意見が分かれた、と報じられています。さっそく厚労省のホームページにアクセスしてみましたが、流石にまだ議事録はアップされていませんでした。ただ、提出されている資料から概ねの流れは理解できるように思います。

 この日の部会に提出された資料1「病床機能報告制度及び地域医療ビジョンの導入を踏まえた国、地方公共団体、病院、有床診療所及び国民(患者)の役割・責務について」は、本年8月6日に発表された社会保障制度改革国民会議報告書から以下のような文章を引用します。

津田俊秀著・岩波新書

 エビデンスベイスドメディスン、根拠に基づいた医療(EBM)ということが言われはじめてはや二十年、エビデンス即ち医学的根拠というものは、臨床領域においては広く共有されている概念だと思っていました。

 本書は、実は日本の医学教育は未だにEBM前の、明治時代に大陸から輸入された思考方法に捕らわれており、それゆえに数量的データは明らかな危険が示されているにも関わらず、それを排除したり適切な警告を与えたりすることをせず、したがって回避できる被害を拡大させてきたのだと、様々な例を示して指摘します。

 

事務局長 小林洋二

 10月19日、東京のAP品川九階会議室で、第二三回総会が開催されました。

 小林から、議案書に沿ってこの一年間の患者の権利に関する動きを報告した後、現段階の情勢及び今後の方針に関する討議に入りました。

 日本医師会は、今年1月から9月にかけて、ブロック単位の医師会連合会との共催という形で医療基本法制定に関するシンポジウムを開催しています。しかし、一般公開されたのは1月開催の福岡、3月開催の札幌までであり、5月の奈良シンポジウム以降は、会員のみの参加となっています。医事法関係検討委員会の方向性に対し、県医師会レベルで慎重論が強まっている可能性がありそうです。また、2月に発表された全日本病院協会「医療基本法全日病版(たたき台)」には、国民や患者の責務」の条項のみあって患者の権利の条項はありません。また日本病院会が、公表に向けて最終的な詰めを行っている「医療基本法策定に関しての日本病院会からの提言」には、医療事故についての刑事免責、民事免責が盛り込まれているとの情報もあります。医療関係者が、医療基本法という考え方に真剣に向き合い始めたという状況ではありますが、それだけ、「患者の権利擁護を中心とする医療基本法」という出発点から離れていく危険もあります。

ー難病の現場から見る終末医療と命のあり方

浅見昇吾編 上智大学出版

 本書は、上智大学で開催された公開の社会人講座における講義を収録したものです。たいへん重いタイトルですが、副題にあるように、まさに医療、介護、生活の現場から、難病患者本人、家族、看護・介護職、生命倫理、医療ガバナンスまで、さまざまな立場の当事者が生きることについて語っています。

 難病の定義のひとつである「希少性」から、少数の人達を優遇することは許されるのかを民主主義の根幹から問い直す冒頭の編者の講義に続き、ALS患者である舩後靖彦さんによる難病の宣告を受け一旦は呼吸器装着を拒否する死を覚悟しながら自律する生を生き直すまでの過程の語りに感動する一方で、怨嗟のこもった言葉で語られる介護者から受けた極めて悪質な、命にもかかわる虐待の事実に戦慄します。

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