今通常国会で、昨年5月29日付「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」に基づき、医療事故死亡事案については、医療法の改正という方法によって、事故調査制度が新設される見通しであることは、本ニュースでもお伝えしてきたところです。
ところが、1月23日、東京新聞はじめ報道各社から、前日に開催された自民党の社会保障制度特命委員会・厚生労働部会合同会議で「議論が不十分で拙速だ」との批判が相次ぎ、内容を見直す可能性があるとの報道がありました。
医療被害者にとって、不十分ながらも事故調査制度の創設は長年の悲願であり、1999年から始まった厚労省の一連の医療安全対策のひとつの集大成でもあります。まずは制度を創設し、立ちあげなければ、これまでの議論や数多くの被害者の努力が無駄になってしまいます。
そのため、当会もその構成メンバーとなっている「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会医療版事故調推進フォーラム」の名前で、1月27日、自民党の関連部署及び厚生労働大臣に対して、医療事故調査制度創設のための医療法改正を求める要請書を提出しました。
こうした要請活動の結果、1月28日に再度開催された自民党の合同会議において、二年以内に制度を見直すことなどを条件に大筋で了承され、予定通り今国会に制度創設を盛り込んだ医療法改正案が提出されることになりました。
今回提出した要請書は以下のものです。
自由民主党 総裁 安倍晋三 殿
自由民主党
社会保障制度に関する特命委員会 委員長殿
自由民主党 厚生労働部会 部会長殿
厚生労働大臣 田村憲久 殿
平成26年1月27日
患者の視点で医療安全を考える連絡協議会 医療版事故調推進フォーラム
医療事故調査制度創設のための医療法改正を求める要請書
要請の趣旨
今通常国会において医療事故調査制度を創設するための医療法改正を行うことを強く要請します。
要請の理由
私たちは、医療事故の再発防止・医療安全の推進のため、「医療版事故調査機関の早期創設」を実現すべく活動しています。
今通常国会では、平成25年5月29日「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」(以下、「基本的なあり方」)に基づいて、診療行為に関連した死亡事例につき速やかに院内調査を行い、その実施状況や結果に納得が得られなかった場合などに第三者機関が調査を行うことを基本とする医療事故調査制度を創設するため、医療法の改正が行われる見込みでした。
ところが、平成26年1月23日の朝日新聞によれば、自由民主党厚生労働関係部会で、「基本的なあり方」では異状死体届出義務(医師法21条)に改正が加えられず、警察が介入するおそれがあるとの反発が相次ぎ、医療事故調査制度の法制化が危ぶまれる状況にあると報道されています。
しかし、新しい医療事故調査制度における届出と医師法21条の届出との関係は整理しなければならない事項の一つであって、これについては期限を決めて整理(改正附則に明記)すべきであり、医療事故調査制度の創設を否定したり、先延ばししたりする理由とはなりません。医療事故調査制度の創設についてすでに平成19年より議論され、「基本的なあり方」は、医療者、医療事故被害者その他の有識者で構成する検討部会13回の議論を経て、立場の違いを超え、医療事故の原因究明及び再発防止、医療の安全と医療の質の向上のために合意されたものです。それは、医療事故調査制度の創設が、国民に安心・安全・高度な医療を提供するための切り札でもあるからです。その意味で、「基本的なあり方」に基づき直ちに医療事故調査制度を創設することは、行政と国会の責務とも言えましょう。国がこの責務を果たさなければ、避けられる医療事故死亡例が今後も増え続けます。かかる事態が許されないことは言うまでもありません。
以上の理由から、私たちは、要請の趣旨記載のとおり、今通常国会において医療事故調査制度を創設するための医療法改正を行うことを強く求めます。