権利法NEWS

第1回世話人会の報告

事務局長 小林 洋二

 

年も押し迫った12月23日13時から、東京の駿河台記念館で、今年度最初の世話人会が開催されました。参加者は石井麦生・漆畑眞人・小沢木理・木下正一郎・久保井摂・小林洋二・鈴木利廣・高岡香・中村道子・藤井信子(五十音順・敬称略)の各世話人。

 

医療基本法要綱案ブラッシュアップ作業

昨年度の議論で積み残しになった論点について議論され、以下の点が合意されました。

〇 被拘禁者に関する適正手続について

基本法要綱案に、権利法要綱案IV(j)「不当な虐待や拘束を受けない権利」に対応する条項や、拘束を制限する規定がないことが議論されました。権利法要綱案の当該条項及びロードマップ委員会「患者の権利に関する体系」のなかの「患者の身体拘束等自由を制限する際には、その制限は緊急その他やむを得ない場合に限り、また必要最小限度で行われなければならない」といった条項を参照しつつ、基本法要綱案II章に、新たな条項を設けることになりました。場所についても諸説ありましたが、4の「インフォームト・コンセント」と、5の「臨床試験や特殊な医療における権利」の間ということで落ち着きました。

〇 介護サービスとの連続性について

介護サービスそのものは医療基本法の対象ではありませんが、重要な隣接分野であり、医療と介護との連続性に配慮しないと二つの領域の谷間に落ち込む患者(要介護者)が出てくる危険が大きいという問題意識にもとづき、基本法要綱案IIIの3の「療養環境の整備」の一項目として、「国は、医療供給体制及び医療保障制度の整備を図るにあたって、医療と介護との連続性に十分配慮するものとする」という趣旨の条項を設けることとなりました。

〇 2のIVの標題について

現在は「インフォームド・コンセント」との標題になっていますが、これが「自己決定権」保障の条項であることが明確にわかるよう、適切な標題を検討することになりました。

〇 「〜することができる」と「〜権利を有する」の表現について

患者の権利を保障する規定に、「〜することができる」という体裁のものと、「〜権利を有する」という体裁のものが混在していますが、性質上可能な限り、「〜権利を有する」に統一することになりました。

 

医療基本法制定推進のための活動方針

〇 各政党への意見交換の申し入れ

前記のような改定を、1月末までに確定させた後、改訂後の要綱案を各政党に送付し、意見交換の機会を求めることとなりました。12月の総選挙でマニフェストに「医療基本法制定」を謳ったのは公明党だけでしたが、七月の参議院選挙では、多数の政党のマニフェストに盛り込まれることを目指します。

〇 日本医師会への働きかけ

12月22日に日本医師会が開催した医療基本法制定に向けてのシンポジウムに参加した鈴木、木下、小沢各世話人からそれぞれ感想を含めた報告がなされました(本号末尾により詳細な報告記事があります)。パネリストとして発言した小西洋之さん(民主党参議院議員)、伊藤雅治さん(社団法人全国社会保険協会連合会理事長)は権利法のシンポジウムでもお馴染みのメンバーであり、大井利夫さん(日本病院会顧問)、田中秀一さん(読売新聞論説委員)も、これまで医療基本法関係のシンポジウムで発言をしてこられた方です。司会の今村定臣さん(日本医師会常任理事)も含め、医療基本法制定の必要性、問題意識はほぼ共通していることが確認できたようです。しかし、ゲストスピーカーの古川俊治さん(自民党参議院議員)は必要性に疑問を呈し、吉岡てつをさん(厚労省医政局総務課長)も、議員立法によるのが適当として積極姿勢は示さなかったようです。

日本医師会は、2013年には各地で医療基本法に関するシンポジウムを行うことを計画しており、2月9日の福岡シンポには鈴木世話人がパネリストとして登壇することになっています。2012年11月10日福岡シンポの記録集の印刷をこの時までに間に合わせ、医師会シンポの参加者に配布する方針を確認しました。

〇 11月10日シンポの記録集について

シンポジウムの録音反訳に加えて、医療基本法要綱案世話人会案の11月10日版、日本医師会医事法関係検討委員会の医療基本法草案、三団体骨子に、このシンポジウムに寄せられたメッセージを資料につけ、2月9日配布を目指すことになりました。

〇 要綱案解説パンフレットの作成について

1月末に現在議論している部分の改定を終え、3月中に解説付きパンフの発行を目指します。解説執筆は、Iについて久保井、IIについて木下、III及びVについて小林、IVについて石井が担当します。

〇 そのほか

解説パンフ作成後、ひきつづき医療基本法Q&Aの作成を目指して、小沢世話人の方でQの検討を開始します。

各団体の医療基本法に関する発言を一覧できる資料集を作成するため、当面、石井世話人の方で資料収集を行います。

 

医療版事故調創設を目指して

「つくる会」は、2001年9月に「医療被害防止・補償法要綱案の骨子」を採択していますが、この間の事故調に向けての議論を踏まえ、医療事故調査制度のありかたに関する具体的なイメージを提起する時期ではないかと考えられます。

鈴木、木下両世話人において、医療版事故調フォーラムでの議論を踏まえて、次回世話人会までに方針を提起することになりました。

 

故池永満常任世話人の追悼について

昨年12月1日に亡くなった池永満常任世話人(初代事務局長)の追悼のための集まりを企画したいと思います。遺稿となった「新・患者の権利」の出版等との兼ね合いで、適切な時期を検討することにします。

 

今後の日程について

とりあえず、以下の日程が決まりました。第3回以降の会場や総会の具体的なスケジュールは、決まり次第お知らせいたします。

2月5日(火)17時〜20時

 世話人会(駿河台記念館310号室)

4月6日(土)13時〜16時 世話人会

6月15日(土)13時〜16時 世話人会

8月24日(土)14時〜16時 世話人会

 10月19日(土)総会及び記念シンポジウム

今年もよろしくお願いいたします。