権利法NEWS

第22回総会のご報告

事務局長 小林洋二

 

11月10日、福岡のパピヨン24ガスホールで、第22回総会が開催されました。

小林から、議案書に沿ってこの一年間の患者の権利に関する動きを報告した後、現段階の情勢及び今後の方針に関する討議に入りました。

医療基本法については、昨年の総会で発表された「つくる会」世話人会の要綱案に続き、今年三月にはHーPACの要綱案が、また日本医師会医事法関係検討委員会の医療基本法草案を含む「『医療基本法』の制定に向けた具体的提言」が発表されました。四月の、患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会主催の勉強会「医療基本法の制定を 今こそ!」(「つくる会」共催)には各政党の国会議員が顔を並べ、九月には、民主党内に、有志議員による「医療基本法」について考える勉強会が発足するなど昨年に引き続き大きな前進がみられました。

 

今後の活動としては、まず各政党宛に次の内容の要請書を送付することとなりました。

 

【要請の趣旨】

患者の権利擁護を中心とする医療の基本法の制定にご尽力ください。

医療基本法制定を貴党の方針とし、総選挙に向けたマニフェストにおいて明らかにしてください。

【要請の理由】

日本国憲法は、生命、自由、および幸福追求に対する国民の権利について最大の尊重をすべきことを表明するとともに、すべての国民が、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有することを確認し、国が、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めるべきことを明らかにしています。医療は、人々の幸福追求権と生存権の実現に必要不可欠なものであり、医療制度は、それらの基本的人権を擁護するためにこそ存在します。

我が国は1961年以来国民皆保険制を採用し、医療を受ける権利の保障に努めてきました。患者の自己決定権に関しても、国民にひろく認識され、インフォームド・コンセントの実践も普及しつつあります。しかし、重大な医療事故の多発、繰り返される薬害等により国民の医療に対する信頼は大きく揺らぎ、またその一方では、社会構造の変化による所得格差や地域的条件あるいは診療科における医療供給体制の不足等により、医療を受ける権利自体が脅かされ、医療の選択にかかる自己決定権も空洞化する状況が指摘されています。

このような状況を克服し、患者の自己決定権の尊重を含めた最善かつ安全な医療を、すべての人が必要な時に受けられる医療制度を確立するためには、国・地方公共団体や医療の提供にあたる者のみならず、医薬品、医療機器等の産業、医療保険の保険者等医療に関わる全てのステークホルダーが、そしてまた国民自身が、医療の基本理念に立ち返り、それぞれの責務を果たしていくことが求められます。

以上のような観点から、わたしたち患者の権利法をつくる会は、「医療における患者の諸権利を定める法律要綱案」を土台として議論を重ね、昨年10月に医療基本法要綱案世話人会案を策定、発表いたしました。これに引きつづき、本年3月25日には東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニット医療政策実践コミュニティー(HーPAC)「医療基本法制定チーム」の医療基本法要綱案が、3月29日には日本医師会医事法関係検討委員会の「『医療基本法』制定に向けた具体的提言」が発表され、医療基本法制定に向けてのシンポジウムやディスカッションが様々な形で行われています。

医療基本法制定に向けての機は熟しています。

なにとぞ、貴党におかれましても、医療基本法制定に向け党内の合意を形成し、総選挙に向けてのマニフェストにおいてその姿勢を明らかにしていただきたく、ここに要請する次第です。

 

また、医療基本法要綱案世話人会案の解説付きパンフレットを作成し、普及に努めることとします。

安全な医療の実現に向けても大きな動きが見られました。一つは、厚労省「医療の安全・医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」の下に「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」が設置され、事故調の議論が再開されたこと、もう一つは、日本医療安全調査機構の「診療行為に関連した死亡の調査分析のあり方に関する企画部会」が事故調の制度設計に関する報告書を発表したことです。総会では、事故調設立に向けての議論を加速させるため、「つくる会」として事故調査制度の案を策定することなどが話し合われました。

総会後に開催されたシンポジウム「患者も医療者も幸せになれる医療をめざして」については別稿で詳しく報告される予定ですが、患者側が求めているものと、医療者側が求めているものに、大きな違いはないことが確認されたという意味で極めて意義深いシンポジウムになったのではないかと思います。現在、実行委員会では、このシンポジウムの記録をパンフレットにまとめる作業をしているところです。昨年のシンポジウムの記録集と同じく無料頒布が予定されていますので、ご希望の方は全体事務局宛ご連絡ください。

今期の世話人会の日程としてはとりあえず第一回のみ確定しています。

12月23日(日) 13時〜16時(中央大学駿河台記念館)

二回目以降の予定は、この第一回世話人会で決定することになりますので、決まり次第お知らせいたします。