権利法NEWS

第三回世話人会の報告

 

事務局長 小林洋二

 

 5月19日13時から、東京の駿河台記念館で、本年度第三回の世話人会が開催されました。参加者は石井麦生・漆畑眞人・小沢木理・木下正一郎・久保井摂・小林洋二・鈴木利廣・堤寛・中村道子・藤井信子の(五十音順・敬称略)の各氏。

 

医療基本法ブラッシュアップ作業

 前回の世話人会に引き続き、昨年10月に発表した医療基本法世話人会案に対して寄せられた意見をもとにブラッシュアップに向けての議論をしました。現段階で改訂が合意された部分につき、先日配布した「みんなの医療基本法」パンフレット掲載の要綱案との対照表を本号につけておきます。

 以下、主な改訂点について説明します。

 Ⅰー3「医療における基本的人権」として、「最善かつ安全な医療を受ける権利」、「自己決定権」、「病気や障碍による差別の禁止」の三つを挙げていましたが、総会記念シンポで指摘された意見に基づき、「参加権」、「学習権」を追加しました。いずれも、患者の権利法要綱案には含まれているものです。なお、「障害」との文言について、用字を「障碍」に改訂しました。

 安全な医療を提供する義務は、医療施設の開設者だけではなく、一人一人の医療従事者にもあるはずだとの意見に基づき、「医療従事者は、医療に関する患者の自己決定権を尊重し、最善かつ安全な医療を提供するよう努めるものとする」という条項を追加しました。また、患者への結果報告義務も、医療施設開設者だけが負うものではなく医療従事者自身も負う形にするべきだとの意見に基づき、表現を変更しました。

 患者の知る権利に関して、医療従事者の経歴一般を知る権利が認められるのか、またその必要があるのか、との議論を行い、一般的な医療においては、「経歴」を「資格、臨床経験」との文言に改訂するとともに、臨床治験や特殊な医療の場合にも、「専門領域における経歴」という限定を加えました。

 国民皆保険制度の維持を法文上位置付けるべきではないかとの議論がありましたが、本文上に表現することがなかなか難しく、附則の「医療保険に関する検討事項」の中に、「国民皆保険制度を維持しつつ」との文言を挿入する形になりました。前文でも、「我が国は1961年以来国民皆保険制を採用し、医療を受ける権利の保障に努めてきた」との積極的評価を加えているので、併せ読めば、私たちの要綱案の基本的な立場は明らかにできているのではないか、という考え方です。

 このほか、以上の改訂に伴う条文の位置の変更や、微妙な文言の調整を行っています。

 なお、患者の医療情報を得る権利をもっと強調すべきとの意見や、医療と福祉との関係をどう捉えるか、「患者」をどう定義するか、「疾病」という用語は適当なのかなど、さまざまな意見が出されていますが、これらについては、いまのところ、要綱案に反映すべきとのコンセンサスが形成されていません。

 この対照表はあくまでも暫定的なものであり、ブラッシュアップ作業はまだまだ続きます。会員のみなさまも是非ともご意見をお寄せください。

 

日本医療福祉生活協同組合連合会との意見交換会

 当会からの申し入れにより、下記の要領で日本医療福祉生活協同組合との意見交換会が開催されることになりました。

日時 7月21日(土)13時〜15時

場所 日本医療福祉生活協同組合連合会

医療基本法福岡シンポ実行委員会の呼びかけについて

 11月10日(土)に予定されている福岡シンポジウム実行委員会呼びかけ状況について報告がなされました。この実行委員会は、6月16日(土)に第一回が開催されています。議論の状況についてはまた改めてご報告いたします。

 なお、本日現在の、実行委員会参加状況は以下のとおりです。

 医療過誤原告の会、医療事故防止・患者安全学会、医療問題弁護団、NPO法人患者の権利オンブズマン、大阪HIV薬害訴訟原告団、患者なっとくの会INCA、患者の権利オンブズマン東京、患者の権利法をつくる会、九州・山口医療問題研究会、東京HIV訴訟弁護団、福岡県医師会、福岡県歯科保険医協会、福岡県保険医協会、薬害オンブズパースン会議、らい予防法違憲国家賠償訴訟西日本弁護団。

 注目されるのは、福岡県医師会の参加です。

 既にお知らせしているとおり、日本医師会は、3月28日に「『医療基本法』の制定に向けた具体的提言」を発表しています。福岡県医師会が、今回の実行委員会参加のお誘いに応ずることになったのも、その具体的提言の実現を目指していこうという姿勢の現れでしょう。ともすれば、対立ばかりがクローズアップされがちな医師・患者関係ですが、もちろん、それは医療本来の姿ではありません。患者と医療提供者が、ともに医療のありかた、患者の権利について語り合う場をつくっていくこと。それは「医療基本法」というコンセプトの目指すところでもあります。11月のシンポジウムにどうかご期待ください。