事務局長 小林 洋二
先日からご案内している患者の権利宣言二五周年記念集会「今こそ患者の権利・医療基本法を!」がいよいよ近づいてきました。
集会は、内田博文さん(ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会座長代理)による基調講演「医事法におけるパラダイムの転換~国策に奉仕する医療から国民の命を守る医療へ」及び伊藤たておさん(日本難病・疾病団体協議会代表)、勝村久司さん(医療情報の公開・開示を求める市民の会)、平野亙さん(NPO法人患者の権利オンブズマン副理事長)、藤末衛さん(全日本民医連副会長・神戸健康共和会副理事長)、山口美智子さん(薬害肝炎全国原告団代表)によるパネルディスカッションの二部構成です。
内田さんは、刑事法、刑事政策を専門とする大学の先生なのですが、実は、この「患者の権利法をつくる会」設立以前からの準備委員の一人でもあります。私は、福岡でHIV訴訟を支える会が結成された時から親しくおつきあいさせていただくようになりました。その頃から薬害HIV問題だけではなく、ハンセン病問題についても熱く語っておられたことが印象に残っています。熊本地裁にハンセン国賠訴訟が提訴されて以降は、原告支持の立場で国の責任を問う発言をさまざまなメディアで発信し、判決確定後に設置されたハンセン病問題に関する検証会議では副座長として報告書とりまとめの中心的な役割を果たされました。その検証会議の提言に基づいて設置された再発防止検討会(通称ロードマップ委員会)でも、座長代理という立場で、引き続き検討作業の中心的存在であり続けています。検証会議が、「患者・被験者の権利の法制化」を提言し、検討会が「患者の権利擁護を中心とする医療の基本法」を提唱したのも、この間の内田さんの活躍なしには考えられません。こういった検証会議、検討会での検討、議論を踏まえて、患者の権利法制化、医療基本法の必要性についてお話しいただけるものと思います。
伊藤たておさんは、ご自身が四歳の頃に重症筋無力症を発症し、子ども時代のほとんどを病院で過ごされた方です。日常生活を営めるまでに回復し、一九七三年に北海道難病連を設立、難病患者としての運動を展開してこられました。パネルでは、医療の不平等性、権限の医師集中の問題、患者の権利擁護と「モンスターペイシエント」という考え方について、社会資源、医療資源としての患者会の役割といったテーマでご発言いただくことになっています。
勝村久司さんは、高校の理科の先生ですが、陣痛促進剤による事故でお子さんを亡くされ、医療過誤訴訟を闘うとともに、医療被害・薬害再発防止の市民運動に取り組んでこられました。現在は、厚労省の中央社会保険医療協議会の委員として、医療行政に患者の声を反映させる努力を続けています。「インフォームドコンセントの前提であるレセプトやカルテ開示がどのように進んできており、どのような課題があるか」、「リスクマネージメントの前提である医療事故調査はどのように進んできており、どのような課題があるか」、「ADRやメディエーションという前に、そもそも、医療裁判とはどういうもので、医療被害者たちは何を求めてきたのか」という論点でお話いただきます。
平野亙さんは、大分県立看護科学大学看護学部広域看護学講座の助教授として、看護師の養成に携わっておられます。一九九五年以来、「つくる会」の常任世話人となり、現在はNPO法人患者の権利オンブズマンで、オンブズマン会議の中心メンバーとして活躍されています。「医療消費者という言葉について~社会保障の市場化に反対する立場で、サービスを買うことではなく受け身ではなく主体として存在するという意味での消費者であること」、「オンブズマンの苦情相談の意義、その一〇年間の到達点」「苦情相談からみた患者の権利法、医療基本法の必要性」という論点でお話いただけるということです。
藤末衛さんは内科医として地域医療の第一線で診療活動にあたるとともに、神戸健康共和会理事長及び全日本民医連副理事長として民医連活動に取り組んでおられます。全日本民医連も、兵庫県民医連も、本年六月二五日付厚生労働大臣宛「患者の権利の法制化に関する要請書」に名を連ねていただいています。「医療における患者さんの人権を、医療現場の診療過程での人権と受療権などの医療を受ける社会的権利という二つの側面から認識し、実践と運動をすすめてきたこと」「『民主』という看板を掲げながら、内部で患者さんの人権を損なう事件が起こり、正面から総括し、取り組みをすすめてきたこと」「数十年ぶりに、これまでの活動を踏まえ民医連の綱領を『人権』をキーワードに改定しようとしていること」についてお話いただきます。
山口美智子さんは、次男出産の際に投与された血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染した薬害被害者です。全国五地裁に提訴された薬害肝炎訴訟において、最初に実名を公表、原告団の中心として全国を奔走し、全面解決を勝ち取る原動力となりました。その活躍には訴訟の相手だった国側も眼を瞠り、本年四月、内閣府の安心社会実現会議の委員に選任され、席上、あの渡邉恒雄(読売新聞)とわたりあうという場面も。最終報告「安心と活力の日本へ」に「二年を目途に患者の権利法制化」との文言が入ったのは山口さんの活躍によります。「薬害肝炎訴訟の目的と、和解後の活動」、「安心社会実現会議での患者・医療被害者の代表としての発言」のご紹介をしていただく予定です。
パネリストの予定発言の後、休憩をはさんでディスカッションを行います。是非、多くの方に、患者の権利法制化、医療基本法制定に向けてのご意見をいただきたいと考えています。なお、会場からの予定発言として、東京大学医療政策人材養成講座(HSP)第四期生「医療基本法プロジェクト」から、政策立案者の小西洋之さんに発言をお願いしていることは前号でお伝えしたとおりです。
関係団体及び国会議員等に対し、このシンポジウムに向けたメッセージを募集したところ、二〇日時点で、五九の団体及び個人からメッセージが届きました。患者の権利法制化、医療基本法制定に対する期待が高まってきていることをひしひしと感じます。
みなさん、10月31日は、是非、名古屋にお集まりください。
患者の権利宣言から二五年
~いまこそ患者の権利・医療基本法を!
(日時) 2009年10月31日(土)
14時~17時
(場所) 愛知県産業労働センター
九階大会議室九〇二