権利法NEWS

患者の権利法制定に向けた市民懇談会(第3回)に参加して

東京都 亀岬 陽子

12月1日衆議院第二議員会館第2会議室において「患者の権利法」制定に向けた市民懇談会の第3回会議が行われました。今回は、医療側で患者の権利の向上に早くから取り組んでいる医療生協の東京都生協連・鐘ヶ江正志氏より「医療生協の患者の権利章典」とその実践からというテーマのお話、その後小林事務局長より患者の権利に関する厚生労働省の動向についての説明、最後に今後の活動についての意見交換がありました。参加者は、患者団体の方々、国会議員の方々(泉議員・石井議員他)、東京都医師会会長、当会からは前回に引き続き小林事務局長、常任世話人の小沢さん、中村さん、土屋さん、私と、今回新たに堀康司さんも参加されました。

まず鐘ヶ江さんからのお話では、医療生協の組織と事業紹介、患者の権利章典の成り立ち、章典実践のとりくみの紹介などがありました。医療生協は組合員数240万世帯、事業所総数は1702ヶ所あり、1970年代より医療に対する苦情が増え始めたため、医療の改善にいかす主旨で1987年にオンブズマン調査団を結成、イギリス、アメリカ、スウェーデンに派遣するとともに、患者の権利章典起草委員会をつくり、1997年の総会にて患者の権利章典が確定されたそうです。

「患者の権利と責任」の各権利の部分は下記のとおりです。

〈知る権利〉病名、病状(検査の結果を含む)、予後(病気の見込み)、診療計画、処置や手術(選択の理由、その内容)、薬の名前や作用・副作用、必要な費用などについて、納得できるまで説明を受ける権利。

〈自己決定権〉納得できるまで説明を受けた後、医療従事者の提案する診療計画などを自分で決定する権利。

〈プライバシーに関する権利〉個人の秘密が守られる権利および私的なことに干渉されない権利。

〈学習権〉病気やその療養方法および保健・予防等について学習する権利。

〈受療権〉いつでも、必要かつ十分な医療サービスを、人としてふさわしいやり方で受ける権利。医療保障の改善を国と自治体に要求する権利。

〈参加と協同〉患者みずからが医療従事者とともに力を合わせて、これらの権利をまもり発展させる責任。

その後、臨床の場では、いままでの仕事の見直し、ガンの告知の推進、「私のカルテ」活動、医療の安全・感染対策、病院・診療所での権利章典の掲示等をすすめたのですが、2002年4月に川崎協同病院で「気管チューブ抜去、薬剤投与死亡事件」があり、権利章典の理想と現実の医療のギャップが問題となったため、医療・保健の現場にいかせる指針作りを目的とした「患者の権利章典実践ガイドライン」(患者の権利章典実践チェックリスト)がつくられたそうです。これには各患者の権利について、患者および医療従事者の両者の実践が行動目標レベルで具体的に記載されており、以上の活動も含めて、参加者より賞賛の声があがりました。

次に患者の権利に関する厚生労働省の動きについて、小林事務局長よりお話がありました。

まず自己決定権に関する動きでは、インフォームドコンセント及び医療記録開示について、2003年九月に「診療情報の提供等に関する指針」が都道府県に通知されたこと、また11月末には「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン(案)」のパブリックコメントが締め切られたそうです。

安全な医療を受ける権利では、10月に(財)医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業が開始されたこと、厚生科学研究「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」が現在進行中であること、来年度に医療関連死の原因究明を行う第三者機関の設置がモデル事業として予定されていることなどです。

患者の権利法制定の動きについては、4月に経済同友会が「医療先進国ニッポンを目指して~医療改革のビジョンと医療サービス提供体制の改革」で患者の権利法制定を提言したこと、さらに7月には、ハンセン病問題に関する検証会議が「公衆衛生等の政策等に関する再発防止のための提言(骨子)~ハンセン病問題における人権侵害の再発防止に向けて~」で患者の権利法制定を提言したそうです。しかし厚労省側は、患者の権利法はなくても、現行法で患者の権利は守れる、ハンセン病の再発防止は可能であるとして患者の権利法の必要性を否定している等の情報交換がされました。

最後に、今後の方向性としての意見交換では、参加者の皆さんから下記のような意見が出されました。

・各団体の横のネットワークをつくり、互いに協力して患者の権利法をつくって行きたい。

・各団体での医療に関する問題や課題を共有するといいのでは?。

・広報活動(記者会見、シンポジウム、身近な人にその意義を話す等)進めたい。

・患者の権利法をつくるメリット:何のために役立つかを明確化するとよい。

・患者の権利法をつくる会の患者の権利法要綱(案)の共有できる部分を明確化、さらに一般化するとよいのでは?。

・各患者団体で、現在の医療における権利侵害を明らかにし、リスボン宣言等に照らして、患者の権利法の必要性、内容を示していったらどうか。

今後のスケジュールとしては、来年2月17日(木)午後に、議員会館内の会場にて今回の懇談会の総括シンポジウム(テーマ:患者の権利に関する法制度は必要か?)が予定されており、池永先生もシンポジストとして出席される予定だそうです。また同日の午前中には、今までの意見交換、立法活動の経験等を踏まえ、患者の権利法制定に向けての検討をさらにすすめるそうです。

今後も、より多くの方が参加され、権利法制定に向けての大きな流れができていくことを願いつつ、議員会館を後にしました。