権利法NEWS

患者の権利法制定に向けた市民懇談会に参加して

東京都 亀岬 陽子

9月29日、衆議院第2議員会館第2会議室において「患者の権利法」制定に向けた市民懇談会の第1回会議が行われました。(呼びかけは日本がん患者団体協議会の山崎さんと市民がつくる政策調査会事務局長の小林さん)会議の目的は、患者の権利に関する法律の活動をしている市民・団体間の情報・認識の共有化、意見交換と患者の権利法の提案を行うこと、国・自治体・医療機関・国会等の動きについて情報の共有化を行うこと等でした。

当会からは小林事務局長、世話人の中村さん・土屋さん・亀岬、さらにご自分の会の立場も合わせ出席された小沢さんの5名の参加がありました。他に患者団体の代表と思われる方々約30名、患者の権利法について関心のある国会議員数名のご出席もあり、患者の権利法制定に向けて前進するための有意義な会となりました。

資料として医療法(主に第1条)、世界医師会(WMA)の宣言・声明・決議等について(日医雑誌第123巻・第2号より)、ヨーロッパにおける患者の権利に関する宣言、診療情報の提供等に関する指針の策定について等が配布されました。

まず話題提供として、厚生労働省医政局の方より、患者の権利に関するWMAリスボン宣言の原則に沿いながら、対応する医療法の条文の指摘・政策などについての説明がありました。

1.良質な医療を受ける権利

リスボン宣言の原則の1.良質の医療を受ける権利 a,b,c → 医療法第1条2項の「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし(略)」と記載され、医療が行われている。1.dの医療の質の保証 → 医療法第1条の4医師等の責務として「医療を受けるものに対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めねばならない」としている。1.eの供給を限られた特定の医療の公平な選択手続き → 臓器移植等で実施されている。1.fの継続してヘルスケアを受ける権利 → 医療法第1条の4の3項で「必要に応じ、医療を受ける者を他の医療提供施設に紹介し(略)」が相当する。

2.選択の自由の権利

原則2の選択の自由の権利 → 日本ではフリーアクセスが出来、セカンドオピニオンの制度もある。

3.自己決定の権利

原則3の自己決定の権利 → 医療法第1条4の2「(略)医療を提供するにあたり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」とあり手術などで説明が行われている。原則7.情報を得る権利 → 平成15年9月の「診療情報の提供等に関する指針の策定について」がガイドラインとして出され、適切な方法(説明・図示・カルテ開示など)で説明されなければならないとしている。これは検討会で議論され、各団体の意見も吸い上げ、都道府県を通じて各医療機関にお知らせしている。3.c、医学研究あるいは医学教育に参加することを拒絶する権利 → 「臨床研修に関する倫理指針」を告示し、医師は患者さんに対し、研究をいつでも止められる権利があることを説明せねばならないとしている。

4.情報を得る権利

原則7の情報を得る権利 → 「診療情報の提供等に関する指針の策定について」で、このような内容が示されている。

(以上の他、秘密保持、意識の無い患者さんの代理人の必要性、健康教育、宗教上の支援等の話もありましたが、紙面の都合により割愛します。)

その後の意見交換では、患者・家族・団体の立場から、実際の医療の現場では、十分患者の権利が保障されていないこと、医療法の不備、患者の権利法制定の必要があること等の意見が多数ありました。

<患者・家族側からみた医療の現状と患者の権利>

1.良質な医療を受ける権利

医療の実情として、診断が間違っていたり医療過誤が発生している。法律を実現化してもらいたい。医療過誤等、権利が侵害された方の救済も重要である。薬等では、日本では未だに未承認のものは高額な医療費を支払わねばならない。

2.選択の自由の権利

実際の場で、選択権が保証されているかが大切だが、法律や指針どおりでなく、患者の権利が尊重されていない。セカンドオピニオンを知らない人も多い。医療は施されているという意識の方もまだ多い。各先生の専門知識・治療法などについて、情報をもっと得たい。

3.自己決定の権利

インフォーム・チョイスが重要であり、患者が納得して選んで治療を受ける事が大切である。現状は、医師からの説明が不十分である。

4.情報を得る権利

診療情報の提供について、以前より患者側はマイナスの情報であっても自分の病状等知りたがっている。家族への説明も不十分なことがある。レセプト開示の問題がある(手続きについて、医師・患者関係とも関連して)。

5.尊厳を得る権利

医師が患者をいじめるといったひどいこともいまだにある。最期まで尊厳をもって、自分の納得行く医療を受けながら、精神的な支援も得ながら亡くなることができるよう希望する。

<厚労省の方々への要望>

法律が実際に機能しているか把握する事も大切である。

<患者の権利法法制化の必要性>

医療法は、提供する側の立場や考えで作られているが、患者側が平等な立場で話しあえるには患者の権利法が必要である。医療も良くしたいという希望を持っている。医療法では、自己決定権が読み取れない。また実際の医療が評価・改善できるよう表現されたほうがいいのではないか?。医療法は、医療従事者が主語であり、その立場からの法律である。医療の現状からみても、やはり患者の権利を保障するための法律が必要である。

意見交換の最後に、厚労省の方より、患者のための医療体制にしたいという気持ちは同じであること、医師についての情報の開示では、専門医の広告を開始していること、救済については、学会と共に医療関連死の原因究明のモデル事業を始め、患者さんとご家族に説明することを考えている等のお話がありました。

このあとは、各団体からの提案として、一団体より、今の医療制度は患者中心ではない事、必要な支給の不足、良い治療を受けるための情報をもっとほしい等の発表がありました。患者の権利法として具体的な提案があったのは、当会のみであり、小林事務局長より、まず患者の権利法をつくる会のこれまでの活動紹介と成果のお話があり、その後、患者の権利法要綱案パンフレット(5訂版)を配布資料として、要綱案の趣旨・概要の説明が行われました。参加者の方々も、興味深く読んでおられたような印象を持ちました。

今後の活動として、出席された民主党の泉議員(医療過誤訴訟に関わられたそうです)からも、法制化に向けての協力が得られそうです。また会議は、第2回:10月27日午後に、第3回:12月1日午後に同会議室にて行われるとのことです。今までの長年にわたる活動・要綱案の検討が実を結び、さまざまな立場(特に患者・家族側)の方々との活動・意見交換をふまえ、患者の権利の進展、医療の改善に向けての具体的な行動につながることを祈りながら、議員会館を後にしました。