権利法NEWS

書評『カルテ開示Q&A』

勝 村 久 司 著
岩波ブックレット
本体価格480円

けんりほうnewの読者であればみなさんご存知の「医療情報の公開・開示を求める市民の会」事務局長勝村さんの手になるそのものずばり、カルテ開示についてのQ&A問です。

医療被害を受けたときから十数年にわたり、患者の立場から医療情報の公開・開示を求める運動の中心となって運動してこられた著者ならではの、運動の歴史や、その時々の厚労省、医師会、関連団体の発言などを折り込みながら、質問に平易に答える、という形で、実に分かりやすくカルテ開示の今(まさに最新の情報)が説明されていきます。
これは、教師であって、分かりやすく教え、語り、書く、という技術を持った著者だからこそなし得た技です。
同じ問題について意見や原稿を求められることのある一人として、本書の「分かりやすさ」「正確な事実の記述」には、さすが、と、感銘を受けました。
それに、この問題を共に闘ってきた方々の名前を明記した上での、事例の紹介や問題点の指摘。名前や顔のある個人であることが、読む者に問題を身近なものに感じさせ、これらの方々の長年の活動が、今のカルテ開示の実現につながっていることに気づかされます。
「分かりやすさ」は本書の構成からも明らかです。
【カルテ開示の意味】
【現実】基礎知識と経緯・現状を知るためのQ&A
【方法】患者が自分の診療記録を見るためのQ&A
【論点】医療関係者の不安を解消するためのQ&A
【今後】健全な医療を築き信頼を培うためのQ&A
さて、より適切な紹介は、出版社の編集者による次の記事に譲りましょう。
「果たしてこの三年で状況は変化したのか、今度こそ法制化は実現するのか、そもそもカルテとは何か、どうすれば一患者が請求できるのか・・患者と医療者の信頼関係を高め、医療の質を向上させるための具体的な提言とノウハウの数々を収めた、すぐに役立つ貴重な入門書です。」

(久保井 摂)