権利法NEWS

夏合宿を受けて-これからの活動など-

久保井  摂

中川さん、市村さんの報告にあるように、夏合宿では活発な意見が交わされ、(1) 医療観察法案(触法精神障害者問題)、(2) 権利法要綱案改訂問題、(3) 医療事故報告制度問題について議論されました。
二日間にわたる会議の結果、今後の活動について概ね次のような方針が決定されました。

要綱案改訂について

医療観察法案についての八尋報告とその後の議論を踏まえ、医療観察法案問題が提起している精神医療の在り方の問題、昨年のハンセン病違憲国賠訴訟熊本判決により明らかとなった感染症医療の問題に鑑み、要綱案の改定が必要だとの認識で一致しました。現在の権利法要綱案には精神障害や感染症患者の医療の問題意識が反映されていないからです。

そして、議論の結果、要綱案「医療における基本権」(現行は、(a) 医療に対する参加権、(b) 知る権利と学習権、(c) 最善の医療を受ける権利、(d) 安全な医療を受ける権利、(e) 平等な医療を受ける権利、(f) 医療における自己決定権)に新たに(g)として、「(g) 疾病による社会的差別を受けない権利」をおくことになりました。精神障害や感染症などの疾病の種類等にかかわりなく医療を受ける権利、等しく人間として平等に扱われる権利であり、また意に反する医療を強制されない権利の総則となります。

患者の権利各則については市村さんの報告にもあるように、条文そのものを改訂するのではなく、医療観察法やハンセン国賠判決を踏まえて、各則の(a) 自己決定権、(c) インフォームド・コンセントの方式、手続、(d) 医療機関を選択する権利と転医・入退院を強制されない権利、(i) 在宅医療を保障される権利、(j) 不当な拘束や虐待を受けない権利、などの関連する条項の解説に、この問題に言及することになりました。

八尋世話人による起案をまって、会員のみなさんのご意見を募りますので、全体事務局までご意見をお寄せ下さい。

医療事故報告制度について

厚労省が設置している「医療安全対策検討会議」(座長は森亘日本医学会会長)に「医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会」(委員一五名の構成は末尾掲載のとおり)が設置され、7月29日に第一回の会議が開かれています。この会議は公開で、当日配布された資料には、1、医療事故情報の取り扱いの現状、と、2、医療安全対策の観点からこれまで指摘されている主な事項、の2項目に論点が整理されています(この資料の項目を本稿末尾に掲載していますので、ご参照下さい)。厚労省も、問題の所在については、私たちと認識が一致していることが窺われます。

事故報告をめぐっては、報告の対象となる患者のプライバシーの問題(報告に際し患者の同意を必要とするか)、被害補償と結びつかない報告制度自体の危険性や、メリットシステムの導入などについて、様々な意見が交わされました。

その結果、プライバシーに関しては、医療事故報告の再発防止に対する有益性の観点から、報告のレベルでは個別の患者の同意を必要としないことで意見の一致をみました。しかし、その前提として、自己情報コントロール権についての私たちの考え方を明確に示す必要があり、これに配慮した上で、報告や公表の在り方について検討会に提言することが確認されました。

もう一方の論点であるメリットシステムについては、刑事免責はあり得ないことが確認されました。しかし、事故防止の観点から収集した資料は、安易に刑事手続きに利用されるべきではなく、刑事手続きとは一線を画することを明確にすべきであることを提言することとなりました。

また、事故報告は院内だけにとどめず、救済制度とリンクした第三者機関において集約し分析するべきであるとして、そのような第三者機関の設置を提言することにしています。これは、事故分析情報を臨床の場にフィードバックすることによる再発防止の効果を高めるものであると共に、報告制度の(医療側にとっての)メリットとして、補償救済制度の重要性を強調するものともなります。

「医療安全相談センター」について

ところで、医療安全対策検討会議が今年4月に発表した報告書に基づき、この秋には症例が改正され、病院及び有床診療所の安全対策整備として、「患者や医療機関に身近な二次医療圏等に公的な相談体制を整備するとともに、都道府県には第三者である専門家等も配置した「医療安全相談センター(仮称)」を設置するなど、「必要に応じて医療機関への問い合わせや、場合によっては指導等も行う体制を整備する」(同報告書)運びです(http://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0110/tp1030-1y.html)。

この「医療安全相談センター」については、厚労省もはっきりとしたイメージを持っている訳ではないようです。このままこのセンターが動き始めることについての疑念や危惧の思いを出席者がそれぞれ口にしていましたが、いずれにせよ、会としては、医療安全相談センターなるものがどうあるべきかについて積極的に意見を出していくべきだとの意見で一致しました。この点では苦情相談が主体となりますので、これについて日本で唯一実績を持つ「NPO患者の権利オンブズマン」の代表を務める池永世話人に提言をまとめてもらうことになりました。

また、報告制度とリンクすべき救済制度構想については、加藤世話人を中心に提言をまとめることになりました。
いずれの提言についても、会員のみなさんの意見を広く求めます。

近々の連絡をお待ち下さい。