権利法NEWS

患者の権利法をつくる会の合宿に参加して

京都  中川 素充

この度、初めて患者の権利法をつくる会の合宿に参加させていただきました。

一泊二日で決して長い議論ではなかったのですが、(周りには何もない宿で)密度の濃い議論が行われ、私にとっては新鮮なことばかりでした。

まず、いわゆる「医療観察法」案について、報告と議論がなされました。この中で特徴的だったのは、精神医療全般の問題として、更には感染症治療もあわせて意思に反する医療について自己決定権の見地から「患者の権利法」にどう反映させていくかという議論が行われていたことでした。この法案に対する反対の声として、保安処分の創設云々という議論が多い中で、こうした患者の権利全般の問題として捉えていくアプローチはやはりさすがだと思いました。悪法に単に抵抗するだけでなく、すぐにでも教訓にしていく、こういう姿勢は今後の私個人の諸活動でも参考にしていきたいと思いました。

その後は、医療事故報告制度についての議論となりました。まず、現状の医療事故報告制度の報告があり、現在、行政機関で行われようとしている医療事故・調査報告制度、相談体制について議論がなされました。参加者の中には若干のアプローチの差がありましたが、被害救済を抜きの事故報告や相談体制には意味がないということは一致していました。こうした行政機関の動きなどは普段は全く意識していなかったので、勉強になるとともに、自分の不明を思い知らされました。

翌日も、医療事故報告制度について個人情報保護との関係や、医師の免責の是非などが議論されました。普段は何気なく医療事故情報制度はあって然るべしと簡単に思っていましたが、他の権利や制度との関係でどう調整していくかを議論しなくてはならないことを実感しました。刑事免責の問題については、東京女子医大事件などを機に賛否両論をしばしば聞くところで、興味はありました。確かに、医療従事者の過密な労働実態はよく聞くところであり、医療行為自体危険が伴うことは事実ですが、例えば職業運転手が事故を起こせばたとえ事故報告をしても免責されないこととの比較からしても、医療従事者のみ別格にするのはやはり困難にも思います(そう単純な比較では済まないかも知れませんが…)。

そして、あっという間の合宿は終わり、名古屋の方々の案内で、美味しい「ひつまぶし」を食べて、帰路につきました。

私は、昨年10月に弁護士になったばかりです。まだまだ知識も経験もないのですが、医療過誤や薬害問題などに取り組んで命や健康が大切にされる社会を作るのに少しでも役立っていきたいと思います。

また、そうした社会の実現のためには、単に事件に取り組むだけでなく、今回の合宿の議論のような政策等の議論、運動の必要性を感じました。来年も参加したいと思います。

ちなみに、最近、後輩の大学生に新人弁護士の生活について話をしたのですが、意外(私にとっては)にも、個別の事件の取り組みよりも、「患者の権利法をつくる会」のような政策提言型の活動に関心を持っている人が多いことを知りました。今後、そういう人たちをも誘えればとも思っています。