権利法NEWS

医療事故報告の制度化に向けた動き

事務局長  小 林 洋 二

厚労省は、全国82の特定機能病院に対し、医療事故の院内報告制度を義務づけています。先日、この制度で報告された医療事故の数字が発表されました。それによれば、この2年間(正確には22ヶ月)に約1万5000件の医療事故が報告され、そのうちの387件は患者に重篤な被害が発生したとされています。

最も事故報告の多い医療機関が2926件、最も事故報告の少ない医療機関は0件となっていますが、この差は何を示しているのでしょうか。事故発生の頻度が医療機関によってこれほどまでに差があるとは考えにくく、むしろ、医療事故として報告すべきものか否かという考え方が医療機関によって大きく異なっていると考えるべきでしょう。事故報告1万5000件、重篤例387件という数字には相当な暗数が隠されている、つまりこの数字は最小限のものであると考えた方がよさそうです。

この1万5000件、特に重篤例387件のうち、何件が医療機関の過失に基づくものとして患者あるいは遺族に対する賠償が行われたのか、それは厚労省の報告からは分かりません。これらの「事故」が「事故」としてきちんと患者側に説明されたか否かさえも分からないのです。勿論、この事故報告例を再発防止にどのように役立てていくのかも、分からないとしかいいようがありません。これはいわば院内報告制度の限界と考えられますが、厚労省の医療安全対策推進会議が4月17日に発表した報告書案は、このような院内報告制度を全国の病院及び有床診療所に拡大しようというものです。これが実現すれば、報告数だけは膨大に集まるかもしれませんが、分かるのは数が膨大であるということにとどまってしまうのではないでしょうか。

5月27日付毎日新聞によれば、厚労省は、医療安全対策推進会議の報告書案で見送られた医療事故報告集約システムを検討するための作業部会を発足させる方針であるとのことです。私たちの求める制度を作っていくために、この作業部会はかなり主要な戦場となるかもしれません。

なお、前回の世話人会で決定された「医療事故報告・調査の制度化に関する要請書」については、文案が確定し、現在、各市民団体の同意を募っているところです。近日中に提出する予定です。