事務局長 小 林 洋 二
3月19日の朝刊各紙の報道によれば、厚生労働省が設置した医療安全対策検討会議は18日、「(仮称)医療安全推進総合戦略」の報告書案をまとめました。
内容的には、(1)医療事故防止指針を病院ごとに作成する、(2)事故やニアミス事例を集めて原因を分析し、再発防止に活かすための「院内報告制度」を設ける、(3)診療科を超えて組織する安全対策委員会を設置する、(4)事故防止のため継続的に職員研修を実施するといったところで、これらは既に「特定機能病院」の認定基準になっており、目新しいものはありません。基本的には、こういった対策を、病院及び病床のある診療所の全てに義務づけるのが今回の報告案の趣旨のようです。
毎日新聞の報道によれば、「検討会議の中では、実際の事故例を収集したり、医療機関に対する強制的な調査や報告の制度化を求める意見もあったが、『かえって事故の隠ぺいにつながる』などの反論もあり、『今後法的な問題も含めてさらに検討する』ことにとどまった」とのこと。実際の事故例を収集すると却って事故の隠蔽に繋がるような医療文化を変えていくことなしには、いくら医療事故防止対策を策定しても掛け声倒れになることは目に見えているように思われます。なお、この検討会議の議事録は厚労省のホームページで読むことができるのですが、現在アップされているのは残念ながら昨年11月開催分までで、具体的な報告書案をめぐる議論はその後になるようです。
「実際に起きた医療事故から防止策を学ぶ」という視点は、やはり我々市民の側から提起していかないと出てこないのでしょうね。
一つ注目すべき点があるとすれば、こういった防止策を満たしていない医療機関に対しては入院患者一人あたり1日約8000ないし1万2000円支払われている診療報酬から100円程度減額する罰則を設けて実効性を高めるという方針です(朝日新聞の報道)。
前回の世話人会で、医療被害防止補償システムの議論をした際にも「医療被害防止補償機構が医療被害事例を分析し、それに基づいた再発防止の提言を行うという制度を作ったとしても、それを医療機関にどう守らせるかを考えなければ意味がない」という問題提起がありました。その点だけについて言えば、今回の厚労省の方針は一つの突破口になりうるかもしれません。
最終報告は四月にまとまる予定のようですので、報告書が入手でき次第、続報をお伝えします。