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医療事故防止救済法案の骨子

鈴木  利広

一、目的

1、被害補償制度、報告制度、原因分析と再発防止提言の各制度の確立

2、医療事故の防止と被害の迅速・公正な救済を図る

3、安全な医療を受ける権利の確保

4、医療の質の向上と国民の健康の保持

二、医療事故の定義

  1. この法律で「医療事故被害」とは、医療の過程に起因する事故で、医療を受ける者に生じた疾病・障害・死亡をいう。
  2. 医療の過程に起因する事故には次の場合を含むものとする。

    1) 医薬品(ヒト組織に由来する医療品・医療用具を含む)の有害作用

    2) 検査、処置、手術等の医療行為を原因とする副損傷、合併症

    3) 医療施設内における転倒、転落、院内感染事故

    4) 医療機器の誤作動を原因とする疾病の悪化

    5) 患者の疾病の悪化で、障害又は死亡の回避について医療提供者側に帰責原因のある場合

  3. 医療提供者側の帰責原因の有無を問わない。

三、医療事故防止救済機構(医薬品機構を参考に)

1、設立、管理、監督

(1) 医薬品機構に準じた特殊法人

(2) 設立、出資は政府

(3) 監督責任は厚生労働大臣とし、オンブズマン監査制を導入する

(4) 役員には、患者・医療消費者・被害者代表を入れる

(5) 全国各都道府県に支部を設置する

(6) 医薬品機構は本機構に合併し、予防接種被害救済制度も統合する

(付記)金銭給付については、a.特殊法人基金方式、b.保険方式、c.政府事業方式等がありうるが、その他の事業を合わせ行うためにはa.が適当と考えた。

2、業務

(1) 拠出金の確保

1)政府の補助金

2)医療産業からの拠出金

3)医療機関からの拠出金

(2) 救済給付

1) 給付内容の水準は当面現行の医薬品副作用被害救済基金に準じるも、更に検討する。

2) 請求、審査、給付、不服申立手続は医薬品副作用被害救済基金に準じる。

但、請求手続は簡略化し、決定までの期間を定める。

審査は内部審査制度とし、不服申立手続は陪審制的色彩をもたせる。

3) 審査は、疑わしきは被害者の利益に判断する。

4) 職権的調査権限を付与する。

5) 医療過誤責任、PL責任がある場合でも給付を行い、給付後の求償権を認める。

6) 相談業務の重要性を位置づける。

(3) 医療事故例の集積、調査、分析と防止提言

1) 医療機関、患者、医療産業等から報告をうける。

2) 救済給付請求例も含め調査、分析を行う。なお、担当職員に医療機関に対する調査権限を付与する。

3) 医療事故防止のための勧告や提言を行う。

(4) 事故情報の公表、公開

四、厚生労働大臣及び自治体の責務

1、機構その他の提言に基づき、診療体制の改善等の医療事故防止政策を立案する。

2、救済制度については3年ごとに検討、改善を図る。

3、苦情相談解決窓口の設置。

4、医療事故被害者の後遺症に対する治療体制を整備する。

五、医療産業の責務

1、医薬品、医療機器等にかかる医療事故例の機構への報告義務

2、事故防止努力

3、PL保険への加入

六、医療機関の責務

(1) 賠償責任保険への加入

(2) 事故例の原因究明努力

(3) 医療事故被害者への医療記録の開示、報告と説明

(4) 救済申請手続への協力

(5) 医療事故例の機構への報告及び調査協力義務

(6) 事故防止システム

インフォームドコンセントの徹底

専任リスクマネージャーの配置

偶発事象等の集積と分析体制

安全教育の実施

カルテ監査制度

(7) 苦情対応窓口の設置

七、損害保険会社の責務

医療事故に関する賠償責任保険について、個人情報保護を前提に保険金支払事例を公表する。