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ハンセン国賠訴訟全面勝訴判決確定!

福岡市  久保井  摂

去る5月11日、熊本地方裁判所はハンセン病国家賠償訴訟について、国のハンセン病予防政策の誤りとらい予防法を1996年まで改廃しなかった国会の立法不作為責任を認める、原告側全面勝訴の判決を言い渡しました。

この裁判は、原告のひとりである島比呂志さんが、「けんりほうnews」に『法曹の責任』という論文を寄稿したことに端を発するものです。1998年7月にわずか13名の原告がはじめたこの歩みは、判決当日には779名の大原告団へと膨れ上がり、判決の一週間後には大量の追加提訴を行い、1700名を越える方々が原告に名前を連ねました。
2年10ヶ月という異例のスピードで進んだ訴訟手続の間、私たち弁護団にとっては、それまで「知らない」ということにより踏みつけにしてきた原告の方々の、気が遠くなるほどの被害に出会い、学び、打ちのめされながらも進む日々のくりかえしでした。こうまで徹底的に人生を破壊されながら、なお人間であることを明らかにし、明日に向かおうとする原告のみなさんの、毅然とした姿に感動し、それを司法の場に、また社会に伝えるため、みんなが一致して力を合わせた裁判でした。
裁判を通じて、たしかに動き始めた原告のみなさんの姿が、そしてその訴える事実の重さが、たくさんの人の魂を揺さぶりました。

けんりほうnewsでも、しばしばこの問題を取り上げ、原告のみなさんの意見陳述を掲載させていただいたり、会員のみなさんにお伝えする努力をしてきましたが、結審間近にマスコミがこの問題を大きく取り上げたことから、国民の多くが支持する大きな運動になりました。

そして、何よりも、訴訟の前後を通じてこの問題に取り組み、原告を支援して下さった、沢山の支援者のみなさんの力があって、司法を動かし、このすばらしい判決を手にすることができたのだと思います。

判決が、原告の、そしてすべての元患者のみなさんにもたらしたものは、私たちに想像できないほど、大きなものでした。
それは、何ものにもかえがたい、人間としての尊厳、まさに「解放」というにふさわしいものです。判決を得たみなさんが、口々に「太陽が輝いた」と言い、「希望の光です」と言い、珠玉のようなことばを発し、みなぎるような力を得て、間もなく「控訴断念せよ」と拳をあげて政府に立ち向かう姿に、私たちも背中を押されて、その目的達成のために駆け回った二週間でした。

控訴断念などあり得ないという「常識」を覆し、坂口厚生労働大臣を動かし、最終的に小泉総理に決断をせまったのは、まさにこの未曾有の被害から人間として回復しようとする原告のみなさんの魂の叫び、そうして、こんなひどいことは許されないという圧倒的な世論の力であったのです。

ご支援いただいたみなさんには、紙面を借りまして、お礼申しあげます。
また、ぜひ沢山の方々に、この事件の詳細を知っていただきたいと思います。