最終報告案
事務局長 小林 洋二
3月19日付読売新聞の報道によれば、国立大学医学部付属病院長会議の「医療事故防止のための安全管理体制の確立について」最終報告案がまとまりました。最終報告の公表は3月末の予定です。
中間報告については、ニュース106号及び108号で、既にお伝えしたとおりですが、新たに、医療事故の背景として批判されている医療現場の密室体質の解消のために、患者・家族への対応を詳細に盛り込んでいるところが最終報告の特徴のようです。
説明にあたってのポイントとして
「医療事故や事故の疑いのある事態が発生した場合、患者や家族に誠実かつ速やかに説明することが必要」
「ミスの事実は、結果に影響がなくても包み隠さず伝える」
カルテ開示については
「診療を目的として医療従事者が作成した記録は、患者・家族から求めがあれば、原則として開示することが必要」
「他の医療機関にセカンド・オピニオンを求めるための原資料の謄写も含め、診療の検証を目的とした開示請求を認めるべき」
とされています。
これは、医療事故の場合こそカルテ開示が必要、という考え方であり、115号でお伝えしたような、「訴訟の恐れがある場合は開示拒否もやむなし」(2月28日付朝日新聞)といった、日本医師会の姿勢との違いが、際だっています。
また遺族への対応についても
「残された人々が患者の疾病や行われた医療、死に至る経緯を知りたいのであれば、要請を尊重し、できる限りの対応が望まれ、診療記録の開示要請にも応えるべきである」
とされており、中間報告でも示唆されていた、遺族のカルテ開示請求権を認める姿勢が明確に示されました。遺族からの開示請求を対象外とした国立大学付属病院や日本医師会のカルテ開示ガイドラインに比較すると大きな前進です。
さらに重要なのはカルテ開示の部分で「医療ミスか否か病院と患者側で見解が対立していても、開示を拒むべきではない」という文章が入っていることです。中間報告について、108号で「医療事故の場合でなければ遺族にカルテが開示されないとすれば、病院側が事故であることを否定してカルテ開示を拒否する事例が相次ぐのではないか」と述べましたが、どうやらその懸念は最終報告で払拭されそうです。
この最終報告は、「医療事故被害救済・再発防止のためにもカルテ開示法制化を!」という私たちの訴えに対し、非常に強力な武器になるものと思われます。