権利法NEWS

会に寄せられた本 『明日を信じて』

医療過誤被害者の会10年の歩み

医療過誤原告の会
定価 1,500円

そうでした。「原告の会」と、「つくる会」は、ほぼ同時期に設立されたのでした。

10年間の活動が綴られ、それに寄せる方々の文章や講演録を読みながら、設立当時のことを思い出しました。あれから10年が過ぎているのですね。

この冊子は、90頁。明るい木漏れ日の写真が表紙を飾るうつくしい冊子です。

けれど、どの頁にも、この会をつくらずにはいられなかった、そうして今現に闘っている医療事故被害者の方々の気持ちがにじみ出しています。そういう意味で、とても重い本です。

とりわけ、10年間の会の活動の記録は、原告の会のあり方を端的に示すものであると同時に、それまで孤立した立場に止まらざるを得なかった被害者が、発言し、相互に意見を交換して、社会にメッセージを伝えていく、そういう活動の顔をよく伝えてくれます。

この10年で、患者の権利をめぐる状況はずいぶん変わりました。その根っこの所に、医療被害にあった方々の、深い苦しみ、長い闘いの歴史があることを、常に忘れてはならない。当たり前のことですが、そのことを改めて思いました。

10年を祝っての寄稿には、ところどころ「人は過つもの」(To Err is Human)というフレーズが出てきます。人が手がけるものだから、医療は当然ながら過ちの可能性を秘めた行為である。その当たり前のことを、無理に否定してきたのが、従来型の医療であったとすれば、これからは過ち得ることを当然の前提に、それを防止し、ことが起きたときには被害者の立場から救済を考える仕組みを、構築しなければなりません。

被害者の裁判の経験、今闘っている裁判での出来事。どの文章も心に痛く、この苦しみを放置するこの国の制度は何なのだろうと、哀しみすら覚えますが、この10年の取り組みを経て、医療をめぐる問題意識は確かに変わりました。まだ達せられない明日のために、次の一歩を踏み出す決意表明なのだろうと、そのようにも、私は受け取りました。

(本号にチラシを同封していますので、お求めの方はご利用下さい。)