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本の紹介『薬害が消される!』~教科書に載らない6つの真実~全国薬害被害者団体連絡協議会・編(発行・さいろ社)

薬被連副代表世話人  勝村 久司

昨年10月、サリドマイド、スモン、薬害エイズ・薬害ヤコブ、MMR、陣痛促進剤の被害者団体や原告団が連携して、「全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)」が結成されました。

それぞれが、長年に渡って、裁判を闘い、厚生省と交渉してきた団体です。それらが一同に集まって向かった先は文部省でした。

「薬害が教育できちんと伝えられていない。」例えば、日本のお産が、平日が日曜の1.5倍、昼間が夜間の2.5倍の数になるくらい、知らない間に陣痛促進剤が使われ、多くの子どもが副作用で脳性麻痺になっている事実は、昭和四九年から再三、全国の全ての産科医に対しては警告されています。しかし、保健の教科書では、このような事実が全て隠されてしまっています。

また、昨年には、薬害エイズ訴訟にした詳しく記載した小学校四年生の社会科の教科書に対し、文部省の検定意見が付き、記載が全て削除されるということも起こりました。

そして、医療の専門家を育成する大学教育でも、薬害は全く伝えられていません。薬被連が主催する薬害フォーラムに参加したある薬剤師は、感想で「薬害の中身を初めて知った。」と書いていました。そもそも日本の医学を支配してきたのは、大きな権力を持つ大学の医局でした。

昨年10月、私たちは公教育、高等教育、生涯教育において、薬害を繰り返さないための真実の伝達を求め、文部省に要望書を提出しました。ところが、交渉の場で文部官僚は「薬害」と「薬物乱用」の問題と混同しており、彼らがそもそも「薬害」を知らないことが明らかになりました。

文部省は、被害者団体と会うのは年に一度だけ。しかも30分以内と制限しています。今年の10月の2回目の交渉では、前回「薬害問題」と「薬物乱用問題」を混同していたことを謝罪しただけで終わってしまいました。

今年10月に発行されたこの本には、それぞれの薬害の被害者団体が自ら語った被害の実態と、誰よりも被害を繰り返して欲しくないと願う彼ら自身が、薬害の構図とそれを打ち破るために教育に期待する思いが書かれています。

これから、医療を受ける側にも、医療を施す側にもなる子どもたち。教育には、健康や人権を守る真の情報伝達、情報公開をしていく責任があると思います。

(薬被連のHP)

http://homepage1.nifty.com/hkr/