事務局長 小林 洋二
さる11月11日、東京のアジア青少年センターにおいて、第10回定期総会が開催されました。その結果、別紙の議案書が採択されましたが、そのほかの決定事項及び議論について報告します。
○ カルテ開示請求運動について
小沢世話人から、本年度のカルテ開示請求運動、特に10月に実施されたカルテ開示110番の結果を踏まえて、次年度の運動方針について問題提起が行われました。小沢世話人からは、今回の総会のためにレジュメというにはあまりにも立派な資料「カルテ開示キャンペーンをめぐる考察」が提出されましたので、本号と一緒に皆様にもお届けします。
「何をやるかよりも前に『やる人がいるか?』である」という小沢世話人の問題意識は、「つくる会」の組織論とも関係してなかなか厳しいものがあります。池永世話人から「世話人会とは別に『カルテ開示世話人部会』をつくるべき」という提案もありましたが、これもやはり私たち「つくる会」が、それを担う主体を創り出せるか否かというところにかかってくる問題です。来年、二度目のカルテ開示110番を実施する際には、相談マニュアル、相談カード、集計表といったツールに工夫を重ねて、集約がしやすく、かつその集約結果が、政党や官庁に対して説得力ある働きかけになるようなものにしたいと思います。
なお11月19日の毎日新聞の報道によれば、カルテ開示法制化に関する厚生省の調査では、市民の84%が賛成で反対はわずか4%であるのに対し、医師は法制化賛成が35%、反対が48%という結果になっています。
カルテ開示法制化は圧倒的な市民の賛同を得ていますが、これを法制化という結果に結びつけることができるかどうかは、まさに私たち「つくる会」の力量が問われているといっても過言ではありません。会員の皆様の一層のご協力をお願いします。
○ 医療事故被害救済システムに関して
「医療被害の救済を受ける権利」を権利法要綱案にどのように位置付けるかについて、世話人会で議論が分かれていたことはこれまでの「けんりほうニュース」でもお伝えしてきたところですが、今回の総会で、以下のような方向性が確認されました。
・基本権の一つに「安全な医療を受ける権利」の項を新設する。
・「患者の権利各則」に、「安全な医療を受ける権利」の具体化の一つとしての「医療被害の救済を受ける権利」を新設する。
・具体的な「医療被害救済システム」に関しては、「患者の権利法要綱案」とは別に「医療事故被害防止救済法要綱案」として提案する。
この議論の中で、医療関係者の会員から「医療事故の原因の一つとして、医療機関の人員配置の問題がある。適正な人員配置は医療被害の防止対策として重要ではないか」という問題提起がありましたが、その点については「医療被害救済システム」の問題というよりも、「患者の権利法要綱案」の基本権である「安全な医療を受ける権利」の具体化の一つとして、「国及び地方公共団体の義務」あるいは「医療機関の義務」の中で検討すべきであるということになりました。
今回の総会で基本的な方向性が確認されたことにより、少なくとも「患者の権利法要綱案」改訂作業はほぼ目処がついたと思います。本年度の世話人会で具体的な案文について議論を重ね、次回総会には改定案をかけることができるでしょう。
「つくる会」はいよいよ設立10年目に入りました。10周年にふさわしい成果を得て、次回総会を迎えたいものです。