NPO患者の権利オンブズマン理事長 池 永 満
患者の権利オンブズマンは、長期間入院していた精神病院が患者の再入院を企図して退院時に薬の減量を行ったこと、そのため長期間の入院を余儀なくされたことなどを内容とする苦情調査申立て事件について、オンブズマン会議における全会一致の決議により申立人の苦情を支持し相手方病院に対する改善勧告を行う旨の報告書を採択し、去る12月14日までに執行するとともに、共同記者会見により事案を公表しました。
15名により構成されているオンブズマン会議(議長・内田博文九州大学法学部教授)は、精神科医を含む調査小委員会を設置して苦情内容に関する争点の解明や両当事者を含む関係者からの事情聴取の結果などを含む調査報告書の提出を受け、さらにオンブズマン以外の専門相談員(精神科医)から参考人として意見を聴取するなど慎重な審議を行った上で、相手方病院の医療行為を、患者のインフォームド・コンセントの権利と健康権を侵害したものであり、退院時の薬(向精神薬)の減量により意図的に再入院させ長期入院を強いた可能性も否定できないと結論づけたものです。
本件事案は、単に一病院の特殊な現象というにとどまらず、日本における精神科医療の在り方に警鐘を鳴らすものとしてマスコミからも注目されていますが、報告書の全文は、患者の権利法をつくる会のホームページにアップされていますので、ご参照ください。
なお、患者の権利オンブズマンにおいては、市民相談員等による相談支援事業が毎日行われており、7月から11月までの5ヵ月間の累計は471件(電話338、面談138)に達していますが、前記の苦情調査申し立ては相談支援活動では解決が望めなかった事案について、オンブズマン会議が第三者的な立場から調査し、100日以内に結論を出すこととしている調査・点検・勧告事業に基づくもので、その第一号事件でした。
こうして患者の権利オンブズマンにおける二つの主要な事業が、そのシステムを完成させ、社会的にも有用な機能を果たすことを見定めたかの如く、去る12月10日、特定非営利活動法人(NPO)としての福岡県知事による認証もなされ、事業の継続性に対する社会的責任も一層高まりました。
現在、医療機関が自らの苦情処理システムを確立するという課題を推進する上で重要な役割を果たす患者の権利オンブズマン・協力医療機関・福祉施設(26施設が登録承認済み)による合同研修会(2000年2月13日)に向けての準備作業も進められています。
こうして「特定非営利活動法人患者の権利オンブズマン(英文名Patients' Rights Ombudsman Japan)」の活動は質量ともに順調に発展していますが、それ故に一層たくさんのボランテイアの活動を保証する組織的財政的強化が切実な課題として浮上しており(現在委嘱済みのボランテイアは100名を超えました)、理事会では、今年度(2000年3月まで)目標である賛助会員500名を早期に達成し次年度目標(1000名)に一日も早く接近することを訴えています(現在300数十名)。
権利法の会員の皆さんがこぞって賛助会員としてご入会いただきたく、心からお願いいたします(年会費・個人3000円、団体6000円です)。
<患者の権利オンブズマンの上記改善勧告の際の報告書はこちら>