権利法NEWS

第9回定期総会のご報告

患者の権利法をつくる会事務局長  小林 洋二

る11月21日、東京の中央大学駿河台記念館において、世話人会及び第九回定期総会が開催されました。その結果、別紙の議案書が採択されましたが、そのほかの決定事項及び議論について報告します。

○ 診療記録開示法制化に関連して

「医療記録法要綱案」(けんりほうニュース93号に掲載)はこれまで世話人会案という形になっていましたが、今回の総会で正式に採択されました。今後は私たちのパンフレット「与えられる医療から参加する医療へ」に「患者の諸権利を定める法律要綱案」とともに収録し、普及を進めていきます。

この「医療記録法要綱案」を正式に採択し、普及するにあたっては、近藤誠世話人から「この要綱案に従って医療記録を作成することは現状では困難であるという理由で、条件整備をカルテ開示法制化に先行させようという意見に利用されかねないのではないか」と懸念する意見も出されました。この点に関しては、要綱案は医療記録のあるべき姿を示すものであり、現状の医療記録がこのような理想から遠いものであっても、現状のまま開示を法制化すべきというのが当会の立場であり、条件整備先行論には立たないことを(解説・注釈といった形で)明確にした上で普及するという結論になりました。またこの要綱案はこれまでの議論の到達点であり、「患者の諸権利を定める法律要綱案」と同様、採択後も議論を重ね、必要に応じて改訂していくべきものであることも確認されました。

○ 患者の権利擁護システム構築に関連して

池永満世話人から、福岡の「患者の権利オンブズマン」の活動が、また加藤良夫世話人から「医療被害防止・救済センター」構想が報告されました。これらに関連して、鈴木利廣世話人より「患者の諸権利を定める法律要綱案」で医療被害の救済を受ける権利を明確にし、被害救済システムを法律化することを射程に入れて改訂作業を進めるべきだ、との意見が出されました。

○ 介護保険に関連して

池永世話人より、「患者の諸権利を定める要綱案」には「患者」の定義がない、介護保険施行後は、「患者」という概念を「保健医療施設ユーザー」という観点から再構築する必要があるのではないか、との意見が出されました。

○ 役員選任について

議案書のとおり、常任世話人として福地直樹さん、世話人として藤井信子さんが新たに選任されたほか、世話人兼監査役として「医療と福祉を考える会」の柿原史恵さんが選任されました。

なおこの点に関して、加藤世話人から、留任とされている世話人及び常任世話人に対して留任の意思確認がなされていないのはおかしいのではないか、との苦言が呈されました。事務局としては特に退任の意思表示がない役員の方は留任を承諾していただけているものという考えでしたが、加藤世話人のご指摘どおり、やはり意思確認を行うべきであったと思います。この紙面を借りまして手続不足をお詫びいたします。

今後の活動方針は議案書のとおりですが、それに加えて「患者の諸権利を定める法律要綱案」の改訂作業を行う必要があります。当面、総会で提言された「患者」の定義及び医療被害の救済を受ける権利の問題がありますが、なにしろ1993年以来改訂していませんので、おそらく全体にわたって議論する必要が出てくると思われます。1993年以来の患者の権利の前進を反映した、よりよい要綱案にするために会員の皆様の英知を結集していただくようお願いいたします。

1時に総会を開始した時点では、例年通り(?)ほとんど世話人のみの出席しかありませんでしたが、終わる頃には定員72名の会場が満員御礼の大盛況となりました。要するに2時からの総会記念企画「徹底討論!カルテ開示」お目当ての方が席を確保するために総会の後半から出席したというわけです。その「徹底討論!カルテ開示」の模様に関しては、来月号で詳しくご報告するつもりですが、今月号にはとりあえず会場からいただいた意見を掲載いたしました。討論会の熱気が伝わればと思います。