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カルテ開示法制化見送りに対するイデアフォーの意見書

イデアフォー

【資料紹介】

当会の団体会員でもあるイデアフォーが、カルテ開示法制化見送りに反対する意見書を厚生大臣宛に提出していますので、ご紹介します。
イデアフォーの連絡先は、文京区千石4-46-14青山ビル301(・03-3944-8198)です。

1999年8月14日
厚生大臣 宮下創平様

診療記録開示法制化先送りに抗議します

イデアフォーは乳がん患者が中心になり、より良い医療の実現を目指して活動している市民グループです。自分たちが乳房温存療法にたどり着く過程で医療の閉鎖性に気づき、1989年の発足以来、インフォームド・コンセントの推進を第一の目標に掲げて、活動を続けてきました。
さる5月24日には厚生省宛に、医療に関わる他の32の市民団体とともに、「診療記録開示の法制化を求める要望書」を提出いたしました。

イデアフォーの会員は現在500余名ですが、その中には自分自身で情報を集め、いくつかの病院を巡った末、やっと乳房温存療法を選択できたという経験を持つ人が数多くいます。発足当時も現在も、納得のいく医療・治療法を探し当てるのは決して容易なことではありません。数年前までは、セカンドオピニオン・サードオピニオンをとるためにも是非必要な、自分自身に関する情報であるレントゲン写真などの検査資料を借り出せた人は殆どいませんでした。
ところが、今年の1月にイデアフォーが発行した『乳がん治療に関する病院&患者アンケート』では、セカンドオピニオンをとるために病院から検査資料を借り出した人が40%に上っています。間違いなく患者が変わってきています。患者が主体的に治療法を選ぶようになってきました。

さて、あらためて言うまでもありませんがカルテに書かれた情報は患者のものです。カルテ上の情報を医師と患者が共有することにより、患者はより正確な情報のもとで自ら治療法を選択できるようになるのです。
診療記録開示を支持しているにもかかわらず、日本医師会が法制化には反対し、医師会内部の倫理規範にとどめていることは、納得できません。坪井栄孝会長の「診療情報の提供の問題は、医師と患者の信頼関係があって初めて有効に機能するものであり、全くそれを無視したような法制化議論は医師、患者の信頼関係の破綻を招きかねないと思う」という法制化反対論は、患者の感覚とはあまりにもかけ離れています。
そもそも「カルテ開示」は知る権利という患者の基本的人権を守るものです。信頼関係のあるなしにかかわらず、当然患者に知らされるべき情報なのです。信頼関係があるからカルテ開示がなされるのではなく、カルテ開示がなされ、すべての情報が開示される中から信頼関係が生まれるのだと思います。

患者が希望すればどこの医療機関でも同一の基準でカルテ開示がなされる、そのためには法制化が絶対に必要です。患者がカルテ開示を要求して断られた場合も、法制化されていれば、法的手続きをとって開示を要求することができます。しかし、倫理規範にとどまる場合は、医師会の設置する苦情処理機関から開示しない医師に対して、何らかの指導が行われるということになります。苦情処理機関が第三者の立場ならともかく、医師会内部の機関であれば、患者の立場に立つとは思われず、意味のある制度とはいえないのではないでしょうか。

私たちは、医師会の意向にそって法制化が先送りにされたことに抗議するとともに、厚生省が法制化を望む患者の声に真剣に耳を傾け、再度法制化に向けてご尽力くださいますよう要望いたします。