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第一回医療被害・薬害救済制度確立連絡会開かれる

東京都  弁護士  林  い づ み

月二〇日に、第一回医療被害・薬害救済制度確立連絡会が東京・飯田橋において開催されました。同連絡会は、日本肝臓病患者団体協議会、(社)全国腎臓病協議会、スモンの会全国連絡協議会、HIV訴訟原告団・弁護団、北海道肝炎訴訟を支える会、(財)北海道難病連、日本患者・家族団体協議会(JPC)などの諸団体による懇談会を経て結成されたものです。
第一回連絡会においては、各地からの患者団体、学者、弁護士他報道関係者も参加して意見交換をしました。  

木利広弁護士からは、医療被害救済の考え方、救済の現状、救済と予防、公共政策として無過失責任に基づく損失補償制度の必要性についての提言があり、林からは特に輸血・血液製剤による被害の救済について、厚生省はこの点における無過失救済制度の導入に消極的であること、現行の医薬品副作用機構の問題点、血液に関しては各国において無過失補償制度導入に向けて動き出していること、NIRA報告書における加藤良夫弁護士の論文(救済システム)などを報告いたしました。
さらに、北海道肝炎訴訟を支える会の安井重裕氏から、現在の肝ガンの原因の七割以上を占めるC型肝炎ウイルスについて、予防接種回数とHBs抗原・抗体頻度の相関関係を示すグラフと共に肝ガン急増の医原的性格の指摘があり、全肝炎患者に国家的救済制度が適用されるべきであること、輸血後C型肝炎あるいは凝固因子製剤でのウイルス肝炎での血液行政の責任を問う独自の訴訟が必要となるかもしれないこと等が報告されました。
さらに、日肝協の高畠氏からも、予防接種との相関関係を示す、出生年別によるC型肝炎ウイルス抗体陽性率のグラフの紹介及び現在、輸血事例及び院内感染事例について裁判準備中であること等が報告されました。
また、全腎協副会長の小関氏からは、本年六月末に発覚した透析中の肝炎院内感染事件について現在までに六名の方が亡くなっているがまだ原因究明中であること、五年前の東京の同種事件の死亡事故の教訓が生かされておらず日常的に肝炎感染の危険にさらされていること、及び予防接種世代が一九七〇年代から腎臓透析に入ったこと、合併症としての貧血治療のために瀕回輸血を行ったこと、血液を体外に出すシステムの医療であることなどにより腎臓病患者にC型肝炎の感染率が高いことなどが説明できること、予防接種・輸血における被害救済についての国の責任を考えるべきであるが、医療機関の過失に対する別途の請求権は確保すべきであるという意見が発表されました。
この他にも、クロイツフェルトヤコブ病東京訴訟弁護団の阿部哲二弁護士から、同事件では硬膜が医薬品ではなく「医療用具」とされていたが、今後、さらに様々なヒト組織が「医療用具」として商品化され得ることについての問題提起等がありました。

後に、難病患者、薬害被害者、医療訴訟に係わっている法律関係者、医療関係者、専門家などが一同に集まり、医療被害・薬害救済制度の法制化を目指してこの連絡会を結成したこと、現在厚生省が国会上程を計画中の血液新法についても積極的に発言しこの新法において被害救済制度を実現し同法が新に国民の健康を守る法律となるように働きかけること等の声明を決議しました。

回はさらに広く参加を呼びかけて一〇月五日午後六時から東京(場所未定)で開催する予定です。なお、連絡会の事務局は薬害エイズ被害者の救済団体である「はばたき福祉事業団」(東京事務局FAX03-5227-7126、電話03-5228-1200、e-mailアドレス tsgtokio@t3.rim.or.jp、担当:岩野)が担うこととなりました。

今後、さらに多くの皆様方の知恵を集めて、一歩づつ、患者の声が形になるようにと願っております。