患者の権利法をつくる会事務局長 小林 洋二
さる六月二三日、医療審議会「意見のとりまとめに向けての小委員会」は、カルテ開示法制化を先送りする内容の意見書案をまとめました。この意見書案は、患者の求めがあった場合は診療録そのものを示すことが必要という考え方を示す一方、法制化については賛成、反対の両論を併記し、結論的には「今後の医師側の自主的な取り組みと環境整備の状況を見つつ、検討すべきである」としています。この意見書案は、七月一日に予定されている審議会総会で正式に決定される予定です。
一昨年「カルテ等診療情報の活用に関する検討会」が設置されて約二年間、この議論が続けられてきました。その間に診療記録開示そのものの是非、必要性についてはほぼ決着がついています。そのことは日本医師会が診療記録開示を実践するという内容のガイドラインを倫理規定として決議せざるを得なくなったことでも明らかです。開示が必要であり、推進すべしという姿勢に立つ以上、法制化が望ましいことは言うまでもありません。今回の法制化先送りは、論理的な根拠は全くなく、根拠があるとすればガイドラインを盾にした日本医師会の法制化不要論への配慮だけです。端的に言えば、日本医師会の理不尽な抵抗に、厚生省及び医療審議会が屈したという形になりつつあるのが現状です。
なお、先月号で紹介した朝日新聞をはじめとして、毎日、読売、東京の各新聞社は次々と法制化推進の社説を掲載しています。六月二三日の夕刊では、各社とも、医療審議会の小委員会が法制化先送りの意見書案をまとめたことをかなり大きく、批判的に報じています。世論が法制化を支持していることは明らかですが、これを生かすためにはやはり、厚生省及び医療審議会に市民の声を直接伝えることが必要ではないかと思います。
つくる会は六月二四日付で、医療審議会宛の「診療記録開示法制化先送りに関する意見」を、事務局である厚生省健康政策局総務課にファックスいたしました。健康政策局総務課のファックス番号は03-3501-2048ですので、会員の皆様も是非意見を送ってください。
医療審議会の答申がこのまま正式決定された場合、厚生省は診療記録開示を除いて、広告規制の緩和、医療機関の病床数、及び研修制度等を内容とする医療法改正案を国会に提出することになると思われます。しかし診療記録開示法制化の手段は必ずしもこの医療法改正案に盛り込ませるという方向に限られません。議員立法を目指し、国会議員に働きかけるという手段があります。つくる会ではこれまでも国会議員に対する要請を行ってきましたが、七月からは議員立法を目指す方向で本格的に動き出す予定です。せっかくここまで盛り上がった議論を無駄にしないよう、法制化が実現するまで頑張りましょう。