権利法NEWS

患者の権利オンブズマン(仮称)結成のよびかけ

常任世話人  池 永   満

のほど九州山口医療問題研究会は、最近の連続的な医療事故報道と医療事故の教訓が何ら生かされず同様の事故が多発している日本医療の抜本的な改革・改善を求める患者市民の強い要求、法律上の制度改革をめざしてきた患者の権利法運動の到達点などを検討した結果、この際「患者の権利オンブズマン(仮称)」を早急に設立して、日本における患者市民の主体的運動を背景とした患者の権利擁護システムの構築に向けての第一歩を踏み出す必要があるとの認識で一致し、患者の権利法をつくる会や医療と福祉を考える会に対し共同呼びかけ団体となることをお願いするとともに「患者の権利オンブズマン(仮称)創立準備会」を発足させました。  

既に薬害オンブズパーソン医療事故市民オンブズマン等、医療分野においても市民的監視を強めるオンブズマン活動が全国的に始まっていますが、今回の「患者の権利オンブズマン」運動は、「患者の権利の促進に関するWHOヨーロッパ宣言」(1994年)が呼びかけている(裁判外の)患者の権利擁護システムの日本における確立を明確に展望しつつ、具体的、個別的な患者の権利にかかわる一切の苦情申し立てに対応し、これを支援し、市民的監視の下に患者と医療関係者との対話を進めつつ、必要な調査報告などを行いながら患者中心の医療の確立と医療改善をはかっていこうとする点において、日本で初めての試み、新しい患者・市民運動ともいえます。

なお、ヨーロッパ等における裁判外の権利擁護システムシステムにおいては、ほとんどの場合、・患者・家族の相談にのり、その解決を支援する行動と組織 ・医療機関において患者の苦情を受けつけ解決に当たる窓口とシステム ・医療機関における処理に満足できない患者の苦情を受け付け、公正な立場で調査点検、必要な場合は勧告等をする組織(オンブズマン)の3点セットが存在していますが、今回の患者の権利オンブズマンは、そのうち・と・の役割を果たすことを目的とした市民団体(非政府組織NGO)であり、同時にNPO(特定非営利活動団体)として登録する予定です。

また、患者の権利オンブズマンの人的物的体制としては、・患者の権利擁護の立場で活動してきた一定の実績を有し、かつボランテイアとしてかかわる意欲のある法律、医療、福祉等の専門家を含む若干名のオンブズマン(当初は五名~一〇名を予定)と、・一定の研修を受けオンブズマンと一体となり日常的な苦情相談や支援活動を担当するボランテイアの相談員(専門相談員・市民相談員)および・これらの活動を日常的に支える事務局の三者により構成します。

患者の権利オンブズマン運動の現実的な展開と発展のスピードは、質量ともに、どの程度に強力で広範な専門家を含む市民のボランテイア的エネルギーを結集し得るのかということや医療機関からのオンブズマン活動に対する積極的協力を確保できるか否かにも左右されると思われますが、既に全国の福祉施設や老人病院などにおいて自ら市民的監視を受け入れようとする動きも出始めています。

加えて、昨年6月厚生省検討会が医療記録開示制度の法制化を答申して以降、国立大学病院が医療記録開示の手順を定めたり、法制化の流れに反対するためではありますが日本医師会も医療記録の患者本人への開示を医の倫理として自主的に実施すると決定しました。患者に対する自主的な情報提供を確実に実践させるとともに、医療機関自らが紛争のもみ消しではなく患者の苦情に誠実に対応し医療改善に努める動きを促進させるためにも、今日の情勢自体が患者の権利オンブズマン運動の誕生を要求していると思われます。

患者の権利オンブズマン(仮称)創立準備会としては、この未知の市民運動ともいうべき「患者の権利オンブズマン」運動の立ち上げや組織と活動の在り方などについて様々な角度からご意見、ご質問などをお聞かせいただきつつ、発足の当初からやるべき事と将来的に追求すべき課題や展望などを整理し主体的な力量などを勘案しながら、着実で大胆な歩みを手作りで始めたいと考えていますので、準備会事務局あてにFAXなどによりどんどんこの活動への参加希望の意思やご意見をお寄せいただきたく、お願いいたします。

 

患者の権利オンブズマン(仮称)
創立準備会事務局
FAX 092-631-3306