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入院初体験番外編

ぐいすが早々とまだ幼い声を聞かせてくれました。
何となく心にほっとするものを感じ、母の入院時からのメモを整理しました。入院生活をちょっと斜めからみたものの幾つかを記してみます。

【1】 A病院の巻

(1) 朝、昼、晩とベッド上仰臥位でおむすびを口にした母、「どうしてこんなに毎回シンのあるごはんが炊けるんだろうねェ」
病院食はこんなものと患者さん達は割り切っているのでしょうか?ブランド米をとは望みません。せめて優しく炊いてくれたら、点滴より余程効果があるでしょう。

(2) 待てどくらせど来室しない主治医、経費節約のための医師不足など考えました。ところが医師はいたのです。○○科××医師の名札をつけた白衣の男性、何なのか午後の早い時間帯、彼等は玄関の外で携帯電話でお話し中でした。院内使用禁止、外で話すのは正しい行為です。でもその時間帯ちょっと病室をまわってくれたらと思うのは患者のわがままでしょうか?
外来に掲示された担当医は曜日毎に色々な大学からの出張、それも病室軽視の一因かもしれません。度重なる外での電話姿にこちらがいらいらからあきらめムードになります。

(3) 病院には色々な菌が住んでいます。ゴキブリだって当然一員です。それゆえせめて掃除は手を抜いてほしくないと思いつつ、朝の掃除終了後、せっせと患者の家族は掃除に励みました。でもどうしても出来なかったのは、元は白であったらしいベージュのカーテンでした。仕方がないのでヒモでしばり、終日窓むき出しで生活することに決めました。

聞くところによると、病院と清掃会社の契約は破損防止のため腰より下までとのこと、でも床も丸くモップかけだけ。入院必需品として雑巾用の使い古しタオル数枚とほうき、掃除機代用のガムテープをお忘れなく、とても役に立ちます。

【・】B病院の巻

(1) ほこりの匂いのない白いカーテン、シンのないご飯、そして何と主治医とすぐ顔を合わせることが出来ました。A病院で毎朝四人がかり、大声の清拭でもすすけていた病人、たった一人のナースが静かに語りかけつつきれいにしてくれました。プロの見事な業に感謝です。ほっと一息この安らぎが続いてほしい。

(2) 「膝のプンクで手がふるえていたよ」大分活躍して左膝関節に水のたまった母は穿刺することになりました。医師同志ベッドサイドでドイツ語の穿刺を略してプンクと言ったのを聞きかじった母、若い医師がそのプンクに初挑戦をした時の様子です。研修医もいる病院、その昔私も患者さんにお世話になってプンクや点滴を覚えさせてもらいました。ずい分余分なつらさを押しつけたのに蕫良いよ、ゆっくり練習しなよ﨟と血管を貸して下さったNさんやKさんを時々思い出して感謝しています。
幸い母のプンクは手がふるえただけで一回で成功、やはり治療は苦痛が少ない方が良いですよね。すぐに主治医に対面できる体制(複数の主治医によるチーム医療)ではこうしたふるえも覚悟しなければいけません。

(3) B病院の食堂はレストランと呼ぶ方が似合った雰囲気です。しばし病んでいること、看ていることを忘れさせてくれる良い空間でした。
ある日私たちの隣席にガウン姿の男性と友人らしい背広姿の男性が座っていました。

「○○さん、オペしたんだって?」
「そう僕がやった」
「何?」
「マーゲンクレブス」

えんえんと続きます。
背広姿は外科医、共通の友人は胃癌の手術をしたがあまり将来の展望は良くないらしいのです。でも人の病気を公共の場でこんな風にして良いものでしょうか?守秘義務の範囲はどうなっているのか?

(4) 「看護婦さんにこんなに良くしてもらって何かお礼しなくちゃね」元気になることがありがとうといっても母はそれでは気が済まないと言う。そこでボケ防止も兼ねて、レース糸で花びん敷きを編みつづけることに決定、せっせと編み退院までにありがとうが間に合いました。張り切ってOさんにまで押しつけてしまいました。
謝礼は受け取らないという看護婦さん達もこのありがとうは気持ちよく受けてくれました。

これを書いている合間にパラパラとみた本に良い医療を受けるには、病院の偉い人を紹介してもらうと良いという文章をみつけました。医学部の教授の著書です。患者さんが主役の医療にはほど遠い感覚を持っているのに驚きました。偉い人の紹介状は安心手形ではありません。むしろスペ患(特別な患者)はごたつくという言葉もあるくらいです。偉い人の紹介状がなくても安心して受けられるのが医療の本当の姿のはずです。
付き添う家族の居場所、病室にいることの緊張感等々、病は気からというけれど、それならこうあってほしい病院の姿に対するわがままな願いは書き尽くせません。