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市民が参加する医療-北海道医療シンポジウム

札幌 長縄 三郎

海道では当会主催の医療シンポジウム「患者=市民参加の医療をどうつくるか-質のいい医療サービスを実現するために」が三月二五日、医療関係者や患者家族ら120人余の参加で札幌市女性センターで開かれた。  

じめにコーディネーターの野谷悦子当会世話人が、シンポジウムについての趣旨と当会の活動につき説明し、開会の言葉に換えた。
まず道内でただ一人医師と弁護士資格を持つ竹中郁夫氏が医療過誤とインフォームド・コンセントについて「医療事故が訴訟にまでなるという根底にはインフォームド・コンセントの欠如が基本にあると思う」との見解をベースにインフォームド・コンセントやセカンドオピニオンの理念が先行しつつもなかなか普及していかない点につき医療者側と患者側との原因をそれぞれ指摘した。
「医師らは素人には説明しにくいとか知識にギャップがあるとか言うが、最近の患者等は良く自分の病気についての知識を勉強している。また説明等の情報サービスには点数がつかないからとも言うがこれらは嘘であり、医師のおごりだ」と痛烈に批判した。
一方患者側についても「医師の説明を聞いても、お任せします、という態度をとり判断したがらない人が大半だ」と述べた。
さらに次の問題として隣の科で何をやっているのかが分からない「秘密主義」、病院によって扱う患者の病状の軽重が違い、評価が違ってくる実情、患者側の求めているレベルと医者の勧める選択肢との間の不満などがあり「患者等の希望する治療法と医師側の提示する治療法とをつきあわせ、落とし所を捜すというシステムにはなっていない」とした。
当面の患者としての取るべき姿勢について竹中医師・弁護士は「医療者に対して私はここだけは譲れない、とはっきり言うことが大切。自分はこうしたい、その場合どういうリスクがあるかを聞き、自己決定することが大切。その上で医療過誤が起これば闘う、という位の根性で医者とつきあうことが必要」と述べた。

番目のパネリストは札幌医科大学保健医療学部助教授の皆川智子さん。ターミナルケアを専門にしている皆川さんはまず先頃京都で開催された日本緩和医療学会に参加したことに触れ「今後の医療ではケアを大事にする医療が治療本位の医療にも増して必要ではないか」と感想を述べた。
皆川さんの医療現場では医療者らはインフォームド・コンセントの徹底に努力しつつあるが「調和のために自己主張をひかえたりする日本人気質等を考えるとどうしたらインフォームド・コンセントが日本人になじむのか、が課題で医療者、患者双方の努力が必要ではないか。患者としては病気は自分のことだから、受動的ではなく、はっきりと自分の考えを言うことで医者や病院の不信感解消にもつながっていく」と竹中氏同様医者、患者双方の意識改革と自分の意見を言う勇気の大切さを強調した。

後にパネリストの神戸智子さんは6年前に白血病で子どもを亡くしたが、その闘病生活の中で自身も学習し、化学療法を進めようとする主治医に対して「骨髄移植は出来ないのか」「放射線はかけないタイプを望みます」等様々質問や意見を述べ、説明を受けて「自己決定」した経験を話した。
「疑問に対して質問をぶつけあいながらやっていけば、双方にとって一番良い結論が出るのではないか」と神戸さん。
「臨床医学的な治療というのは必ず人体実験的な側面があります。だから最後のところではギャンブル的な要素が必ずあります。医者側によって固められた治療方針をほぐしてみること、提示された選択肢以外のやり方をこちらから提示してみるなど質問することで医者側の支配構造を変えていくことができます」と竹中氏も積極的な治療参加を勧めた。

場からは主治医に自宅近所の開業医との連携を要望しかなえられた、など体験的な医者と患者との良い関係づくりの話や「日ごろから自分の最後の時のことを考えておくことが大事」「もっと病院側の情報の公開が必要だ」などの意見が出された。