医療事故調査制度創設のための医療法改正を求める要請書

医療事故調査制度創設のための医療法改正を求める要請書

2014年1月27日

自由民主党 総裁 安倍晋三 殿

自由民主党

社会保障制度に関する特命委員会 委員長殿

自由民主党 厚生労働部会 部会長殿

厚生労働大臣 田村憲久 殿

患者の視点で医療安全を考える連絡協議会 医療版事故調推進フォーラム

 

要 請 の 趣 旨

 今通常国会において医療事故調査制度を創設するための医療法改正を行うことを強く要請します。

 

要 請 の 理 由

 私たちは、医療事故の再発防止・医療安全の推進のため、「医療版事故調査機関の早期創設」を実現すべく活動しています。

 今通常国会では、平成二五年五月二九日「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」(以下、「基本的なあり方」)に基づいて、診療行為に関連した死亡事例につき速やかに院内調査を行い、その実施状況や結果に納得が得られなかった場合などに第三者機関が調査を行うことを基本とする医療事故調査制度を創設するため、医療法の改正が行われる見込みでした。

 ところが、平成二六年一月二三日の朝日新聞によれば、自由民主党厚生労働関係部会で、「基本的なあり方」では異状死体届出義務(医師法二一条)に改正が加えられず、警察が介入するおそれがあるとの反発が相次ぎ、医療事故調査制度の法制化が危ぶまれる状況にあると報道されています。

 しかし、新しい医療事故調査制度における届出と医師法二一条の届出との関係は整理しなければならない事項の一つであって、これについては期限を決めて整理(改正附則に明記)すべきであり、医療事故調査制度の創設を否定したり、先延ばししたりする理由とはなりません。医療事故調査制度の創設についてすでに平成一九年より議論され、「基本的なあり方」は、医療者、医療事故被害者その他の有識者で構成する検討部会一三回の議論を経て、立場の違いを超え、医療事故の原因究明及び再発防止、医療の安全と医療の質の向上のために合意されたものです。それは、医療事故調査制度の創設が、国民に安心・安全・高度な医療を提供するための切り札でもあるからです。その意味で、「基本的なあり方」に基づき直ちに医療事故調査制度を創設することは、行政と国会の責務とも言えましょう。国がこの責務を果たさなければ、避けられる医療事故死亡例が今後も増え続けます。かかる事態が許されないことは言うまでもありません。

 以上の理由から、私たちは、要請の趣旨記載のとおり、今通常国会において医療事故調査制度を創設するための医療法改正を行うことを強く求めます。

 貴省は、現在いわゆるヒヤリ・ハット事例(インシデント)について事例分析的な情報及び定量分析的な情報の収集とその分析結果等に基づく情報の提供を部分的に開始しており、この報告書案では、ヒヤリ・ハット事例の収集範囲を拡大することが提言されています。しかしインシデントはどこまで分析してもインシデントでしかありません。真剣に医療事故防止を目指すのであれば、事故事例(アクシデント)についてこそ、このような作業を行うべきことは自明のことです。

 事故事例の報告・調査制度に対しては、「当事者の免責を行うことなく報告を求めることは、法的責任の面で当事者の一方に著しい不利益を生じさせる恐れがあり、かえって事故の隠蔽につながりかねないという意見や、係争中の当事者間の関係にも配慮すべきとの意見もあり、今後法的な問題も含めてさらに検討することとした」とのことですが、この報告書は医療事故を「医療に関わる場所で医療の全過程において発生する人身事故一切を包含するもの」と定義しているのであり、事故報告はそのまま医療過誤責任を認めることにはなりません。また医療事故の発生が医療機関・医療従事者の過失に起因するものであれば、相応の責任を負うべきは当然のことであり、その責任逃れに公的な配慮を行うことは無用のことです。

 医療事故防止の報告・調査制度がかえって事故の隠蔽に繋がりかねないような医療関係者の意識を変革せずして医療事故防止対策はあり得ません。実効性のある医療事故防止対策を実現するため、全ての医療機関に第三者機関に対する医療事故の報告を義務づけ、第三者機関によって医療事故の調査を行う制度を早急に創設されるよう要請する次第です。