患者の権利の法制化に関する要請書
患者の権利の法制化に関する要請書
2009年6月25日
厚生労働大臣 桝添 要一 殿
- 患者の権利の法制化に関する要請書
- 秋田県民主医療機関連合会
- 医療過誤問題研究会
- 医療過誤原告の会
- 医療事故市民オンブズマン・メディオ
- 医療情報の公開・開示を求める市民の会
- 医療消費者ネットワークMECON
- 医療問題弁護団
- NPO法人明日の医療を考える会
- NPO法人線維筋痛症友の会
- NPO法人日本がん患者協会
- 大阪IBD
- 大阪HIV薬害訴訟原告団
- 大阪肝臓友の会
- 下垂体患者の会
- 神奈川医療問題弁護団
- 患者なっとくの会INCA
- 患者の権利オンブズマン東京
- 九州・山口医療問題研究会
- 群馬県民主医療機関連合会
- 口唇・口蓋裂友の会(口友会)
- 市民がつくる政策調査会
- 市民の医療ネットワークさいたま
- 社会福祉法人はばたき福祉事業団
- 社会福祉法人復生あせび会
- 終末期医療を考える市民の会
- 神経痛日本友の会
- 人工呼吸器をつけた子の親の会
- 陣痛促進剤による被害を考える会
- 全国肝臓病患者連合会
- 全国パーキンソン病友の会
- 全国民主医療機関連合会
- 全国ハンセン病療養所入所者協議会
- ソレイユ
- 東京肝炎の会
- 東京HIV訴訟原告団
- 東京HIV訴訟弁護団
- 東京民主医療機関連合会
- 特定非営利法人ネットワーク医療と人権
- 特定非営利活動法人ジストニア友の会
- 特定非営利活動法人日本ナルコレプシー協会
- 特定非営利活動法人山形県腎友会
- 長野県民主医療機関連合会
- 新潟県民主医療機関連合会
- 日本心臓ペースメーカー友の会
- 日本尊厳死協会
- 日本難病・疾病団体協議会
- ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会
- ハンセン病問題ネットワーク沖縄
- 兵庫県民主医療機関連合会
- 宮城県民主医療機関連合会
- 薬害イレッサ東日本弁護団
- 薬害オンブズパースン会議
- 薬害肝炎全国弁護団
- 薬害肝炎全国原告団
- 薬害ヤコブ病東京弁護団
- 要請代表団体 患者の権利法をつくる会
- 事務局長 小林 洋二
- 連絡先 〒812-0044 福岡市博多区千代4丁目31番7号九県前ビル3階
- TEL092-641-2150/FAX092-641-5707
- http://www.02.so-net.ne/jp/^kenri-ho/
- E-mail:kenri-ho@gb3.so-net.ne.jp
「安全かつ質の高い医療を受ける権利」及び「患者の自己決定権」等を国民に保障し、その権利を実現するため、医療提供体制及び医療保障制度を整備する国・地公共団体の責務を明らかにする法律を、日本の医療制度全ての基本法として制定すべきです。 「ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会」の提言を尊重し、早急に、法制化に向けた作業を開始していただくよう要請いたします。
1 「ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会」の提言について
このたび、「ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会」(以下、「検討会」と略称します)は、「医療の基本原則と医療体制の充実」、「患者の権利と責務」、「医療従事者の権限と責務」からなる「患者の権利に関する体系」をとりまとめたうえ、患者の権利擁護という観点を中心に医療関係諸法規を整理・整備する医療の基本法の制定を提言する報告をまとめました。
この検討会は、「ハンセン病問題に関する検証会議」が、「患者・被験者の権利の法制化」を再発防止策の柱として挙げたことを受けて議論を始めたものですが、議論の過程においては、日本におけるこれまでの患者の権利を巡る議論や取組、諸外国の患者の権利法制化に関する状況等が参照されており、ハンセン病問題に限らず、「医療崩壊」と呼ばれるような今日の日本の医療が抱える広汎かつ多様な問題を意識した提言になっています。
従来、患者の権利の法制化については、主に医療を受ける側から主張されてきましたが、本検討会には、日本医師会をはじめとする様々な医療提供者側の諸団体の役員が委員として多数参加しています。このような検討会により、患者の権利擁護を中心とする法律の制定が提言されたことは極めて画期的なことです。
2 患者の権利の普遍性・国際性
すべての人が、自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持し、到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有していることは、世界人権宣言25条、国際人権規約A12条に謳われているところです。
「患者の権利」は、患者(保健医療サービスの利用者)の医療機関等(保健医療サービスの提供者)に対する医療契約上の権利である以前に、このような基本的人権の一つとして理解されるべきものです。
このような「患者の権利」については、1970年代にアメリカ各州で法制化がすすみ、1990年代にはヨーロッパ各国に於いて患者の権利法が制定されました。現在、フィンランド、オランダ、フランス、ベルギー、リトアニア、アイスランド、デンマーク、ノルウエー、グルジア、スペイン、ルーマニア、キプロス等で単独かつ包括的な「患者の権利法」が制定されており、ギリシャ、オーストリア、ハンガリー、ラトヴィア、ルクセンブルグ等でも、他の医療関連法規の中に患者の権利に関する包括的な条項や章を設けています。
3 日本における患者の権利の現状
日本では1990年代以降、患者の自己決定権に関する議論がはじまり、医療法1条の4第2項及び6条の4によるインフォームド・コンセントの法制化、個人情報保護法によるカルテ開示制度化等が進みました。また2000年代に入ってからは、医療の安全に対する社会的関心が高まり、2006年6月には医療法に「医療の安全確保」の章が新設され、現在、診療関連死の原因究明制度が検討されています。
しかし、その一方で、医療費の患者自己負担は年々増加し、経済的理由で医療機関を受診できない患者が増えています。また、医師数の絶対的不足さらには診療科目間及び地域間における医師の偏在等により、必要な医療を受けるのが困難な事態も発生しており、医療現場からは「医療崩壊」の叫びが上がっています。このような状況が進めば、患者の権利の根本である「医療を受ける権利」が空洞化し、自己決定権や安全な医療も、経済的条件及び地理的条件に恵まれた一部の患者のものになりかねません。
このような状況の変化に患者の権利が左右されることのないよう、「患者の権利」を医療政策の根幹に据えることが必要です。すなわち、まず「安全かつ質の高い医療を受ける権利」及び「患者の自己決定権」等の患者自身の権利と、その権利を実現するための医療提供体制及び医療保障制度を整備する国・地公共団体の責務を明らかにする法律を、日本の医療制度全ての基本法として制定すべきです。
検討会の提言を重く受け止め、早急に法制化に向けた作業を開始していただくよう要請いたします。