権利法NEWS

バックナンバー「236号」

事務局長 小林洋二

 2月12日に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」が閣議決定され、国会に上程されました。これはそのような名前の単独の法律ではなく、医療法、介護保険法をはじめとするいくつかの医療関連法規の改正案をまとめたものです。懸案の、医療事故調査制度も、医療法改正案に含まれています。

 今回の改正の基本的な方針となる「医療事故に係る調査の仕組みに関する基本的なあり方」については、けんりほうニュース230号「医療事故調査制度の行方」を、そこに至る議論の流れについては同231号「医療事故調査制度の議論を振り返る」をご参照下さい。また、「あり方」に沿った医療法改正案の国会上程に対し、自民党の厚生労働関係部会でいったん待ったがかかり、医療事故調推進フォーラムとして緊急に「医療事故調査制度創設のための医療法改正を求める要請書」を提出した経過は235号のとおりです。

 では事故調査制度に関する改正部分をみてみましょう。

 障害者の権利に関する条約をご存知でしょうか。国連総会で2006年12月に採択され、2008年5月に発効、日本も2007年9月に署名しながら、長らく国内法としての効力を持たせるための「批准」の手続がなされてきませんでした。

 障害者権利条約締結までの道のりは、それ自体が歴史的なもので、国際的には、国連による1975年の「障害者の権利宣言」、1981年の「国際障害者年」の取り組み、翌年の「障害者に関する国際行動計画」での「国連障害者の十年」宣言の採択、そして、1993年の「障害者の機会均等化に関する標準規則」の採択などがあります。

 これは、伝統的に「障害」を機能障害、すなわち障害者本人の機能の欠如ゆえに生じる問題であって、その解決は医療やリハビリによって機能障害を克服することであるとする医療モデル(個人モデル)の考え方から、障害を持つ人が、そうでない人と同じように社会内で自分で選択した生き方ができないのは、社会の側が必要な支援を提供しないからだとする「社会モデル」への転換を背景とするものです。

蒔田備憲著・生活書院

2200円

 

 著者はいまだ若き新聞記者(1982年生まれ)。あとがきを読むと、公私ともに辛い時期に、縁もゆかりもない佐賀支局に配属され、そこで出会った難病患者のものがたりに知らず惹きつけられ、気づけば150人以上の「難病」患者やその家族への取材を重ねていたという。

 私が彼と出会ったのは、障害者自立支援法違憲訴訟の原告代理人のひとりとして。自分の本来の業務とは無関係ながらも、難病患者を取材し、そのひととなり、生活を、抱えた困難を、「毎日新聞佐賀県版」の片隅で、粘り強く連載するその営みから、たくさんの人につながる中で、九州の原告に取材する窓口として、本書にも登場する青木志帆弁護士(自身が下垂体腫瘍術後の下垂体ホルモン分泌障害を抱える難病当事者)からの紹介ではなかったろうか。

 
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